パンデミック前から1.4%増加

化石燃料からのCO2総排出量、2023年は過去最高の368億トンに

Image:NicoElNino/Shutterstock.com

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにおいて、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が開催されている。この中で、世界の90以上の研究機関から研究者が参加するGlobal Carbon Budget Projectの研究チームが、2023年の化石燃料からのCO2総排出量が368億トンに達する見通しだと発表した。

統計資料によると、2023年のCO2排出量は26か国で減少したにもかかわらず、石炭、石油、天然ガス、いずれの燃料タイプでも世界総排出要は増加すると予想される。特に、世界の排出量の41%を占める石炭からの排出量は、1.1%増加の見積りだ。これは、中国およびインドからの大幅なCO2排出増加が、米国やEU諸国を中心とした排出削減を上回るペースであることを示している。

Image:Global Carbon Project

この傾向は世界排出量の32%を占める石油からの排出量も同様で、こちらは総排出量で1.5%の増加が予想されている。

また、上の2つに隠れがちではあるものの、米国、中国、インドで天然ガスからのCO2排出が増加。これが、世界全体の天然ガス由来のCO2排出量が0.5%増加した背景にあると推定されている。

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研究を主導したエクセター大学グローバルシステム研究所のピエール・フリードリングシュタイン教授は、世界のCO2削減努力による進歩は依然として「痛々しいほど遅い」ものであり、世界排出量をネット・ゼロに到達させるための正しい道筋に乗せるためには、まだまだ取り組みが十分に普及していないと主張した。

また報告書では、現在のペースで温暖化が進行すれば、2015年のパリ協定で定められた地球温暖化による世界気温の上昇を、産業革命以前に比べて1.5℃以下に押さえておけるのはあと7年以下だとする推定値も報告されている。

UEA環境科学部の王立協会研究教授であるコリンヌ・ル・ケレ教授は「最新のCO2データは、世界の排出量をネット・ゼロに向けて減少させていこうとするには、現在の取り組みが十分でなく、また広範囲に及んでいないことを示している。しかし、排出量のいくつかの傾向は動き始めており、気候政策が効果的であることを示している」と前向きなコメントを述べつつ、「気候変動がもたらす最悪の影響を避けるためには、すべての国が現在よりも早く脱炭素化を進める必要がある」とし、やはりまだまだ取り組みが甘い現実を指摘した。

フリードリングシュタイン氏は「パリ協定の1.5℃目標を超過することはもはや避けられないように見え、COP28で会合する各国首脳は2℃目標を維持するためにも、化石燃料排出量の急速な削減に同意する必要があるだろう」と述べている。

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