問題の記事は外部提携先のものと親会社は述べています

著名スポーツ誌Sports Illustrated、「AI生成の架空ライター」記事をこっそり掲載。指摘され削除

Image:Vasilyev Alexandr / Shutterstock

著名なスポーツ雑誌「Sports Illustrated」のウェブサイトが、AIで生成した顔写真をプロフィールに使用した、架空のライターによる記事をいくつも掲載していたことを指摘され、当該記事をすべて削除したと報じられている。

指摘した科学技術系ニュースサイトFuturismによれば、この架空のライターの顔写真は、全く同じ画像が販売されているAI生成の顔写真販売サイトから入手したものだった。

また、このライターの氏名は他のウェブサイトからは見つけることができず、書籍の著者としても発見できなかった。匿名希望のコンテンツ制作関係者や別の関係者によると、この架空ライターは名前と顔写真だけではなく、プロフィールもまったくの架空であり、さらに記事本文自体も、AIを使用して書かれたものが大量にあるとのことだ。

別の情報筋は「たとえ彼ら(Sports Illustrated)がいくらそうではないと言ったとしても、コンテンツは完全にAIによって生成されたものだ」と主張した。

ただ、AI生成記事を掲載するのであれば「これはAIによって生成された記事です」などと但し書きを入れるなりすれば、読者がその記事の信頼性などをどう思うかは別として、大きな問題にはならないだろう。しかし、なぜかSports Illustratedはそうした表記はせず、あたかも人間の著者による記事としてこれらを扱っている。

さらにどういうわけか、これらの架空ライターの記事では、記事内容はそのままに、AIライターの名前、プロフィールと顔写真が、定期的に別のAI生成ライターの名前、プロフィールと顔写真に差し替えられていることもわかった。

また、Sports Illustratedと同じくThe Arena Groupを親会社に持つ金融ニュースサイトTheStreetでも、やはり販売サイトで見つかる顔写真を使用した架空のライターによる記事がいくつか確認され、定期的に記事著者が変わっているのがみつかった。

Sports Illustratedの組合は、問題のコンテンツは第三者によって作成されたものであり、「ジャーナリズムに関してわれわれが信じているすべてに違反している」と述べ、The Arena Groupの経営陣に対して透明性を提供するよう求めた。

また、それから少ししてThe Arena Groupは、Futurismによる報道を受けて、問題のコンテンツの提供者であるAdVon Commerceとの提携を解消したと発表した。

The Arena Groupの広報担当者は、問題のコンテンツはいずれも製品レビュー記事で、外部企業であるAdVon Commerceからライセンスしたものを掲載していたと述べ、Futurismが架空の著者による記事だと指摘したときには、すでに問題を把握し調査にとりかかっていたと釈明している。また、AdVonは問題とされる記事はすべて人間が書いたものだと主張したが、著者のプライバシーを保護するために、特定の記事でライターにペンネームもしくは偽名を使用させていたと述べたという。Arenaは、これは容認できない行為だとし、最終的にコンテンツ削除~提携解消に至ったと説明した

ただしFuturismは、問題の記事にはよく理解できない文章が含まれていることを指摘しており、これがAI生成によるものではないかと指摘していた。たとえば、ドリュー・オルティスと称する架空ライターの記事では「バレーボールは、特に練習用の実際のボールがないと、始めるのが少し難しい」と書かれているが、普通の人ならばこのような表現はしないように思われる。

いずれにせよ、問題の記事がすべて削除され、その記事を提供していた外部企業との提携も解消したのであれば、今後このような問題は起こらないだろう。The Arena GroupはSports IllustratedやTheStreetのほかに、Parade、Men’s Journal、HubPagesなど、265以上のブランドを運営しているという。

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