個人的にもXに思うところはあった?

パリ市長、X(Twitter)をやめると宣言。「世界規模の巨大な下水道」と批判

Image:Frederic Legrand – COMEO/Shutterstock.com

パリのアンヌ・イダルゴ市長は、X(旧Twitter)の利用を辞めると発表した。当初の、できる限り多くの人々が情報にアクセス可能とした画期的なメディアとはほど遠くなり、「民主主義を破壊する」ための道具や「世界規模の巨大な下水道」に成りはてていると批判している。

イダルゴ市長は英語およびフランス語で、Xから去るという長文をポスト。そこでは情報操作やデマ、憎悪の助長や嫌がらせ、反ユダヤ主義、公然たる差別主義、科学者や気候学者やリベラル派への攻撃がはびこっていると指摘した。

さらに「このプラットフォームとその所有者は、意図的に緊張と対立を悪化させている」とのこと。これは、Xのオーナーであるイーロン・マスク氏に向けられたものだろう。

旧Twitterを買収した直後、マスク氏は契約社員を大量に解雇し、その中にはコンテンツモデレーション(書き込みの監視・規制)チームも含まれていた。また最近、マスク氏が反ユダヤ主義の陰謀論に同意したことでアップルやディズニーなど大手企業が広告を一時取りやめており、収入減がさらに加速するとみられている

もっとも、イダルゴ市長がXなどソーシャルメディアに、個人的に複雑な思いを抱く可能性がある事情にも留意しておくべきだろう。

ひとつには、イダルゴ市長は2024年の夏季オリンピック・パラリンピックに向けて、急激に自転車用の道路を増やしてきた。大気汚染を減らしつつ、あらゆる街の機能に自転車により15分でアクセスできる「15分都市」計画の実践だが、その突貫工事でパリが荒れているとする「#SaccageParis」というハッシュタグのもと、熾烈な反対運動が展開され続けている。

またイダルゴ市長は、今回のX上のポストで「民主主義を不安定にし、そのイメージと主権を損なうことを目的とした、選挙プロセスへの外部からの干渉が日常的に行われている」とも主張している。

昨年、イダルゴ市長がフランス大統領選挙に出馬したところ、1.7%の票しか獲得できなかった。これは左派の社会党候補が第1回投票で獲得した歴代最低の結果であり、同氏が「選挙プロセスへの外部からの干渉」と受け取っていても不思議ではない。

そうした諸事情を差し引いても、一定の発言力ある公人がXから離れることは事実だ。米ホワイトハウスもマスク氏が反ユダヤ主義を助長する「忌まわしい行為」をしていると非難しており、今後ほかの国や政治家にも波及していくか注目したいところだ。

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