アップルの採用は望み薄?

M2 MacBook Airを改造、新冷却技術「AirJet」で“Pro級”の性能発揮

Image:Art-Dolgov/Shutterstock.com

アップルのM2チップ搭載MacBook AirとM2搭載MacBook Proの性能に関する大きな違いは、冷却ファンを搭載しているかどうかだ。同じチップを使っているものの、MacBook Airはファンレスで排熱性能が劣るため、サーマルスロットリング(システムの損傷を防ぐため、動作周波数を落とす仕組み)が起こりやすく、十分なピークパフォーマンスが引き出せない。

しかし「AirJet」という新方式の冷却システムを追加することで、M2 MacBook AirをM2 MacBook Pro並みの性能に引き上げられることが実証された。

米スタートアップFrore Systemは、「Solid State Active Cooling(ソリッドステート・アクティブ冷却)」技術を開発。そのサイズは27.5×41.5×2.8mmでSDカード並み、一般的なPC用冷却ファンよりもかなり小さくて薄い。あまりの薄さのため、15インチMacBook Airに問題なく内蔵できたほどだ。

無改造のM2 MacBook Airは、M2 MacBook ProよりCinebench R23ベンチマークで7%遅かった。しかし、AirJetを内蔵したところ、同等のスコアを叩き出した次第だ。

AirJetの仕組みは、簡単に言えばメンブレン(膜)を超音波の周波数で振動させて、風を送り出すというもの。空気の流れで冷却するファンと同じ原理ではあるが、静音・薄型・軽量というメリットがある。公式リリースによれば、5.25Wの熱を21dBAのノイズレベルで除去でき、最大1Wの電力しか消費しないという。

このAirJetは元々、今年5月末~6月に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2023」で公開されたものだ。さらにMacWorldが着目し、MacBook Proに(冷却ファンの代わりに)採用すれば、より大容量のバッテリーを搭載するスペースが生じる可能性があると指摘して、今回のテストに至った流れだ。

本当に長期的な効果があるのかどうかは不明だが、少なくともファンレスのMacBook Airが非常に負荷の高いタスクのもと、30分間を持ちこたえる能力は実証された格好である。

今のところ、AirJetは初期段階の技術であり、Froreはアップルを初めとしたノートPCメーカーに売り込もうとしているようだ。もっとも、アップルは明らかに「冷却ファンの有無や数」によりエントリーモデルとハイエンドモデルの差別化を図っているため、MacBook Airへの採用は望み薄だろう。

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