ごく小さな一瞬の音でも目がどっちに動いたかがわかる

イヤホンでアイラッキング可能に? 耳の中に響く音から目の動きを検知する研究

Image:Meredith Schmehl / Duke University

米デューク大学の研究者らは、人の眼球が動くと、その人の耳の中でごくわずかに音がすることを発見した。これは本人が自覚するほどではなく、高感度マイクを使えば検出できるレベルの音だ。

研究者はその後、この発見をさらに詳しく調べ、目の動く音によって、その人がどこを見ているかを検知可能になったことを、新たな論文として発表した

研究の上級著者でデューク大学の心理学、神経科学、神経生物学教授のジェニファー・グロー博士は、この音が発生するのは脳が目を動かす際、大きすぎる音を弱めるのに役立つ内耳の筋肉、または静かな音を増幅して電気信号に変換する役目を担う有毛細胞を収縮させるせいだと考えた。

そしてそれを確認するため、グロー博士のチームと南カリフォルニア大学のクリストファー・シェラ教授らは、ボランティア16人による簡単な実験を行うことにした。

実験では、まずボランティアに頭を動かさずに、コンピューターの画面上に動く緑色の点を見続けるように指示。そしてそのときの眼球の動きをアイトラッキングカメラで記録しつつ、耳の中の音の変化を高感度マイクで記録し、双方を突き合わせてみた。

その結果、耳の中に聞こえる目の動きに応じた音は、視線が特定の方向を向いたときに、それに応じた特定の音が発生していることがわかった。つまり、音を正確に分類すればそのときにどの方向に視線が移動したかがわかるということだ。

研究者らは、ボランティアが視線を合わせている場所を、耳の中の音のシグネチャーから特定できるようになったという。さらに、視線の追跡状態から、耳の中で鳴っている音を正確に判断する逆引きも可能になった。

グロー博士は、ごく小さな耳の中の音と、視覚の関係を理解することは、聴覚に関する新しい臨床検査の開発につながる可能性があるとし、「頭と耳が動かなくても目は動くが、これは脳が視覚と聴覚の位置感覚を一致させるための仕組みの一部だとわれわれは考えている」と述べている。

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