レアアース生産は中国に依存しています
GMとステランティス、「低コストでレアアース不要な永久磁石」開発に出資
自動車大手のGMとステランティスは、Niron Magneticsによる3300万ドル(約49億8100万円)の資金調達ラウンドに参加し、レアアースを材料に使用しない永久磁石の開発を支援すると発表した。投資金額は公表されていないが、報道ではGMが700万ドル、ステランティスが5000万ドルを投資したとも言われている。
ここ数年、世界の自動車メーカーは電気自動車へのシフトを徐々に進めている。だが、その心臓部とも言えるモーターに使用される永久磁石は、材料にレアアース(希土類)と呼ばれる材料が欠かせない。このレアアース生産量は昨年、中国産のものが世界市場の約7割を占めるまでに増加した。
Nironが謳う、レアアースが不要な永久磁石「Clean Earth Magnet」は、安価な窒化鉄をベースとして開発されたという。この永久磁石を安定的に生産・供給できるのであれば、各国の電気自動車メーカーは、モーターの材料調達で中国への依存を解消できるようになるかもしれない。
Nironのシニアディレクター、トム・グレインジャー氏は「希土類鉱物の生産には多くの製造工程が必要だが、レアアースの供給が中国に集中しているため、製造工程が不透明なうえに価格における透明性も欠けている」と述べている。
窒化鉄は「Fe2N」「Fe4N」「Fe16N2」など、複数の結晶携帯を持つ化合物で、窒素の含有量によって磁気的特性が大きく変化する。そしてFe4NとFe16N2の特徴は、室温環境において強磁性を示すことだ。特にFe16N2は、永久磁石の性能を表すエネルギー積が、理論値としてはネオジム磁石を含めてあらゆる永久磁石中で、最大の値を示すとされる。そのため、レアアースを含まない永久磁石材料としても、近年注目度が増している。
ただし、窒化鉄は理論的に優秀でも、現実にはネオジム磁石をしのぐような強磁性を持つ窒化鉄を作るのが難しい。この材料が強磁性を持つ可能性があることは1970年代にすでに発見されていたが、常にその強磁性を再現することができなかったため、これまで実用化されなかった経緯がある。
また、約200℃で磁性が失われてしまうといった安定性の問題もある。Nironの製品もFe16N2をベースにしているが、こうした問題をどう解決しているのかも気になるところだ。
ちなみに、今回の資金調達ではGMとステランティスのベンチャーキャピタル部門などが参加しているが、それまでにも自動車業界からは、ボルボのベンチャーキャピタル部門がNironに出資しているという。またTime誌は先月、「THE BEST INVENTIONS OF 2023」のGreen Energy部門のひとつにClean Earth Magnetを選出している。
- Source: General Motors Stellantis Niron Magnetics
- via: Electrek Reuters