バッテリーも安全性が低い可能性あり

本物のAirPodsと偽造品、X線スキャンで検証。偽物は中味スカスカ、重し入り

左から本物、偽物1、偽物2(Image:Lumafield)

アップル製品の偽造は深刻な問題となっており、特にAirPodsはアップルもiOS 16に対策を組み込んでいたほどだ。しかし根本的な解決には至らず、今年初めには米当局が1000個以上のAirPodsとApple Watchの偽物を押収したこともあった。

よくできた模造品は一見すれば本物と区別が難しい。だが、X線で透過すれば違いは一目瞭然であるという検証結果が公開されている。

安価な産業用X線CT(コンピュータ断層撮影)スキャナを開発するLumafield社のJon Bruner氏は、本物のAirPods Proと2組の模造品のCTスキャン比較動画を自社ブログやX(旧Twitter)、YouTube上で公開した。

このX線透過により明らかになった、本物のAirPodsと偽造品の主な違いは「バッテリー」「回路」「製造品質」の3つだ。

まずバッテリーに関して本物は、緻密に設計されたボタン電池を各イヤホンに内蔵している。コンパクトなフォームファクターにぴったりと収まり、最適な電力を効率よく供給できるような設計だ。

それとは対照的に、偽造AirPodsは両方とも構造が洗練されていないばかりか、安全性が低いおそれのあるリチウムイオンパウチ(外装が金属缶ではなくラミネートフィルム)電池を搭載。長方形のパウチはフィットするように整形されず、円形のスペースに詰め込まれているだけだ。

回路については、本物のAirPodsは「小型化と精密工学の驚異」であると評している。これは「硬いプリント基板と柔軟なプリント基板を組み合わせることで、コンポーネントを高密度に詰め込み、1mmのスペースも有効に使えるようにしている」おかげだ。

かたや偽造AirPodsは、既製のパーツを寄せ集めたはるかに単純な回路だと分かる。そのため、機能性を追求する余地が少ない。マイクの数も制御回路の数も少なく、音質が損なわれている。

最後に製造品質につき、Lumafield社は本物と偽造品の間に「劇的な違い」があると述べている。偽物の1つは充電ケースにワイヤレス充電の仕組みが全くなく(コイルの存在が確認できない)もう1つは充電コイルはあるが、本物のようにApple Watch用充電器に固定するためのマグネットが欠落している。

それほどスカスカな作りであれば、手に取れば軽さで偽物だとすぐに分かるはず。それを純正品の重さを真似する以外の機能を持たない重しを入れることで「より重く感じさせる欺瞞的な戦術」を採っているという。

これらの偽物は、本物の見かけを再現しているかもしれない。だが、「標準以下の素材を使うことで、さわり心地に影響を与えるだけでなく、製品の構造的な完全性や全体的な寿命も損なわれている」という結論である。

完全ワイヤレスイヤホンの代名詞ともなったAirPodsは、今やアップル公式ストアや大手量販店ばかりか、あらゆるオンラインストアやネットオークションで見かける普及品となっている。本物か偽物かを見極めるために、細心の注意を払う必要がありそうだ。

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