取締役は縛りがきつかった

イーロン・マスク、取締役辞退で“Twitter買収”の可能性が浮上

SpaceXやテスラなどの創業者でCEOのイーロン・マスク氏は、Twitterの株式9%以上を取得して筆頭株主になり、取締役会の席も用意されると伝えられていたが、マスク氏は結局、そのTwitterからの申し出を辞退した。しかし、それはマスク氏がただの株主としてじっとしていることを意味していないかもしれない。

もともと、マスク氏は4月4日に米証券取引委員会(SEC)に、スケジュール13Gと呼ばれる様式でTwitterの株式取得を報告する書類を提出していた。これは受動的な立場で株主になることを意図する投資家のための書類だ。その後、マスク氏が取締役に就任することが明らかになると、この書類は事実と異なる内容であることが指摘され、新たにスケジュール13Dと呼ばれる、積極的に経営に関わっていく投資家を対象とする様式と内容に書き換えられた。

Twitter側とマスク氏が協議して作成したであろうその書類では、マスク氏がTwitterの取締役になる条件として、任期の2年間および退任後90日はTwitter株を最大14.9%までしか取得できないことになっていた。そして日曜日にはマスク氏がTwitter取締役就任を辞退したことが伝えられた。

CNBCによると、マスク氏は取締役を辞退した後の4月11日にこの書類を再び修正。最新版では、現状はマスク氏にTwitterに関する「計画や意図」はないものの、株価だけでなく「何らかの代替となるビジネス、投資などの相対的な機会」といった要因を評価して「いつでも適切な時点で計画を変更する権利を有する」と記されているという。

さらに、取締役就任の条件だった14.9%の株式取得上限はなくなり、Twitterを手中に収めようと思えば、敵対的買収を提案できるようになったとCNBCは伝えている。なお、Bloombergによるとマスク氏の資産額は約2600億ドルで、対するTwitterの市場評価額は約370億ドルとのことだ。

更新された書類には他にも、たとえばマスク氏が潜在的な企業合併・結合や他の戦略的代替案について取締役会と議論することができ、さらに個人筆頭株主として「ソーシャルメディアや他のチャネルを通じて」Twitter取締役会に意見表明ができるとも記載されている。つまり、マスク氏には株を自由に買い増しできる立場を維持しつつ、自分の土俵であるSNSを利用して(そのSNSを運営する会社の)取締役会に対しても影響を加えていく意図があると考えられる。

Twitter CEOのパラグ・アグラワル氏は、マスク氏が取締役への就任を辞退したことを伝える従業員向けの文書で「私はこれが最善だと信じている」と、関係が良好であるととれる表現をしていた。ただ「この先、気が散ることもあるだろうが、われわれの目標や優先順位は変わらない」とも記し、マスク氏に関して「我々は彼の意見を受け入れ続ける」と述べていることから、マスク氏から複数の「気が散るような」要求があった可能性が指摘されている。

マスク氏の行動は不規則であり、今回のTwitter株取得をめぐる一連の動きも、今後の展開を含め、常識的に予測することは困難を極める。引き続き今後の展開が注目されるところだ。

ちなみに最新の情報では、資産運用会社のThe Vanguard Groupがマスク氏を上回る10.29%を(ファンド保有者に分散する格好ではあるものの)保有していることが明らかになっている。

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