日常の移動に特化した都市型小型EV

元ケーニグセグのデザイナーも関わる小型EV「Luvly O」。車体設計にはF1マシンからの着想も

Image:Luvly

スウェーデンの電気自動車スタートアップLuvlyが、最初の製品である「Luvly O」の開発を進めている。このEVは日本の軽自動車のように小さく、日常の通勤や買い物といった近場での移動に目的を絞り込んだ都市型車両だ。1万ユーロ(約160万円)前後の価格帯で、2024年中の発売が検討されている。

一般的に電気自動車そのもの自体は、燃料を必要とする通常の自動車にくらべて環境に優しいかもしれないものの、生産にあたっての材料消費と納車のための流通においては、環境に優しいというのは難しい状況だ。

一方、Luvly Oは生産工場から必要な部品一式をキットのような「フラットパック」(特許取得済み)にまとめて出荷され、主要な販売地域にある小規模な工場で組み立てることを計画している。こうすることで、完成車よりも効率よく販売先へ運搬することが可能となり、一般的な電気自動車と比較して車両の生産、輸送、流通にかかるエネルギー消費が最大80%削減されるはずだとLuvlyは主張している。

Image:Luvly

また、2人乗りで可愛らしい外観を持つLuvly Oは、そのシェル素材に塗装やその他の表面処理を必要とせず、完全にリサイクル可能な素材を使用している。車両各部のパーツ・コンポーネントも、交換が簡単で必要に応じて修理がしやすく設計されている。

車体デザインは同郷の高級スポーツカーメーカー、ケーニグセグでデザイン部門を率いていたJoachim Nordwallのデザインスタジオが担当している。そして軽くて丈夫なシャーシで作られるF1マシンからインスピレーションを得たという「Slow formula racing tech」と称する設計技術が使用されている。Luvly Oのアルミ製フレームは、両サイドを軽量プラスチックフォームで挟み込んだサンドイッチ構造を備え、衝突の際には衝撃がフォームの部分で吸収され、フレーム内の乗員を保護するようになっている。

なお、Luvly Oはマイクロカーというジャンルに分類されるため、一般的な自動車のような衝突安全性試験は義務づけられていないが、Luvlyはコンピューターシミュレーションを使用してコストを抑えつつ安全性を確認している。

Image:Luvly

ウェブページに掲載されている情報によると、Luvly Oの最高速度は90km/h、航続距離は最大100kmでトランク容量は267リットルとされている。車体重量は2つの着脱可能なリチウムイオンバッテリーを除いた状態で400kg未満。2つのバッテリーパックは1つずつ順番に消費するようになっており、片方を自宅や職場で充電している間、もう片方を使って出かけることができるという。

ドイツ航空宇宙センターに勤めるライト・ヴィークルの専門家、Mascha Brost氏はCNNに対し、2050年までに世界人口の68%が都市に住むと推定される中、都市空間は非常に貴重になると述べている。そのため、自動車もより小型化するほうが歩行者や緑地スペースの確保に有利となり、都市部に閉じ込められる熱の量も減らすことができるとしている。そしてLuvlyが主張するように、小型電気自動車(LEV)は、 輸送時の二酸化炭素排出量を大幅に削減する可能性があるとも指摘した。

ただ、マイクロカーをより高速かつ大型の自動車と同じ道路で走らせることは、やはり必ずしも安全とはいえない。そのため、こういった都市型の小型車両の利用を促進するには、安全な利用環境を整備することも重要になる。

Brost氏は参考例の一つのとして、米ジョージア州ピーチツリーの取り組みを紹介した。この地域では総延長257kmにおよぶ第2道路網が整備され、市街地に配置された1万台のゴルフカートで人々が安全に移動できる環境を提供している。あらゆる都市でこれと同じことをするのは難しいかもしれないが、小型車両だけでなく歩行者にも安全な環境を整備するうえでは参考になるかもしれない。

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