自己展開するノイズキャンセルロボット
不特定多数の人が会話する場で、必要な会話以外をミュートできるゾロメカ風ロボット
人の耳と脳には、多数の人が集まる騒がしい場でも、ある程度周囲の雑音を意識から排除し、話し相手との会話に集中できる能力がある。しかし、疲労が重なっていたり体調を崩しているとき、またはあまりに周囲の雑音が大きすぎる場合は、相手の声が聞き取りづらくなることもあるだろう。
ワシントン大学の研究チームは、複数のグループがそれぞれ自由に会話している空間で、不要なグループの会話を消音し、特定のグループの会話だけを聴取可能にする小さなロボット群「Acoustic Swarms」を開発、Natureに発表した。
Acoustic Swarms(直訳すると音響群)は、単体では消しゴムほどの大きさしかないものの、それぞれに複数のマイクと1つのスピーカーを搭載し、一定のエリアに自律展開する能力を備えている。
この一連の小さなロボットたちは、ロボット掃除機のルンバのようにエリアに展開し、バッテリーがなくなれば充電ステーションに戻る基本的な機能を備えている。また展開中は、それぞれが互いの位置を認識して可能な限り遠くなるように分散し、搭載するマイクで話している人々を区別、複数のグループによる「スピーチゾーン」を把握して、必要な会話が行われているゾーン以外の会話を消音可能にする。
既存のヘッドホン製品や、iPhoneの「声を分離」機能など、ひとりのユーザーにとっての騒音を打ち消す技術はすでに普及している。だが、Acoustic Swarmsの機能は、会話の聞こえる範囲をグループごとに制御することが可能だ。
これだけの説明では仕組みがよくわからないが、この技術を紹介する動画をみると、それがどう機能するかはよくわかる。
研究者らは、Acoustic Swarmsをキッチンやオフィスなど、3人から5人の人々がバラバラに話すシチュエーションで実験した。最初に使用された7機のロボットには、それぞれが展開したときに対応する声やその場所と言った情報は与えられなかった。しかし、展開するに従ってそれぞれが把握すべき声を認識し、最終的には90%の確率で、互いに1.6フィート(50cm弱)以内にいる人の声を特定できたとのこと。
たとえば、この技術をスマートホーム製品に導入すれば、たとえば「アクティブゾーン」のソファに座っている人だけが、音声操作デバイス(テレビなど)を操作できるようになる可能性があると研究者らは述べている。
また現在は、テーブルの上だけでなく室内全体を自律走行できるマイクロボットを作ることを計画しているという。研究者らは、このロボットが実際にスピーチ/アクティブ/ミュートのゾーンに分ける音を、スピーカーから発することができるかについての研究を進めている。これによって、部屋の異なる場所にいる人々が、それぞれ異なる音声を聴くことが可能になるはずだ。
なお、チームはこのロボットにはカメラを搭載せず、すべて音響で、そして外部のネットワークを使用せずに目的となる動作を処理することで、プライバシーの問題を回避していると述べている。
- Source: Nature Communications
- via: University of Washington BGR