登山団体はGoogleマップに従って遭難するリスクも指摘

Googleマップ、崩落した橋を奨めて死亡事故を起こしたとして訴えられる

Image:mhong84/Shutterstock.com

昨年9月、Googleマップの道案内に従って車を運転していた男性が、崩落した橋から転落して溺死した事故があった。この男性の遺族が、Googleがマップの更新を怠ったことが死亡に繋がったとして、過失で同社を提訴した。

米ノースカロライナ州ウェイク郡高等裁判所に提出された訴状によると、フィリップ・パクソン氏(47歳)は娘の誕生日パーティーの帰り道、雨の降る夜に慣れない道を走行中、崩れた車道から小川に転落して溺死したという。

未亡人であるアリシア・パクソン氏はバリケードも標識もない崩落した橋の所有者やGoogle、その親会社であるAlphabetを相手取って訴訟を起こした。パクソン夫人は自分の車でパーティから2人の娘を連れて帰り、後片付けのため遅くまで残っていた夫とは別々に運転していたとインタビューで語っている。

パクソン夫人は、事故後に夫のスマートフォンを調べたところ、彼がGoogleマップで帰り道を調べていたことが分かったという。

Google広報は、パクソン一家に深い哀悼の意を表するとともに「わが社の目標はマップに正確な経路情報を提供することであり、この訴訟を検討している」との声明を出している。

Googleマップは長年にわたり、2013年に崩落した橋を渡るようドライバーに指示していたという。訴状によれば、Googleは2020年11月に地域住民から苦情を受け取っていたにも関わらず、そのルートを推奨し続けたとのことだ。

遺族の弁護士は、「1日や1週間ならまだしも、9年間もそこにあった」という。またパクソン氏の死から1年近く経つが、Googleマップはいまだに事故のあった橋を渡るよう指示を続けているそうだ。

実際、問題の橋が崩落していることは、Appleマップでは正しく表示されているが、Googleマップでは反映されていないことを米AppleInsiderは指摘している。

Appleマップ(右)では崩落した橋は途切れているが、Googleマップ(左)では繋がったまま

Googleマップを使うと、車や自転車では通れそうにない道を奨められたり、通行止めになっていたりすることは珍しくない。また、吹雪のなか幹線道路が閉鎖されていたためGoogleマップで代わりのルートを探したところ、そこも部分的に除雪されているにすぎず、スマートフォンの圏外で危うく遭難しかけた事例もあった(iPhone 14の衛星経由SOS機能で事なきを得たが)。

ほかGoogleマップはドライバーだけでなく、ハイカーも混乱させていると批判を浴びている。スコットランドの登山団体は、同サービスが崖や岩だらけの急斜面など「致命的な」コースを案内する危険があると警告していた

本訴訟の原告は、Googleマップをはじめとする地図・ナビゲーション関連プラットフォームにはタイムリーに地図を更新し、危険の報告を受ければルートを修正する責任があると主張している。今回の訴訟により、それが実現することを願う人も少なくないはずだ。

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