サンプル投下後、そのまま別の小惑星へGO

NASA「OSIRIS-REx」ミッション、小惑星ベンヌのサンプルが9月24日地球到着へ

Image:NASA

NASAは、OSIRIS-RExミッションで将来地球に衝突する恐れのある小惑星ベンヌのサンプルリターンを実施、そのサンプルを収めたカプセルは9月24日に大気圏に再突入する予定になっている。

NASAが探査機を小惑星ベンヌに送ったのは、その組成が炭素を豊富に含むといわれるC型スペクトルを持つ、地球近傍小惑星だったことが理由だ。またサンプルリターンや、太陽熱放射によって小天体の軌道が影響を受けるヤルコフスキー効果の確認なども目的だった。

そして2018年、OSIRIS-RExがベンヌに到着したとき、その風景はミッションチームが想像していたものとは大きく異なっていた。ミッションの主任科学者ダンテ・ローレッタ氏は、この小惑星の地表が予想以上に大きな岩や瓦礫のようなもので激しい起伏を持っており、着陸する場所をかなり慎重に選び、探査機の着陸シーケンスも再プログラムする必要があることに気づいたという。

そして、この困難な状況を打開したのは、英国のロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイ氏らの協力だったとローレッタ氏は述べている。

天文学者でもあるメイ氏は、ローレッタ氏からの協力の呼びかけに応じた。そして共同研究者のクラウディア・マンゾーニ氏とともに、探査機が撮影した大量のベンヌ地表写真から3D写真を作りだして、ミッションチームに提供した。

これにより、ミッションチームはできあがった画像をすべてチェックし、安全な着陸地点を選出できた。その結果、生命の起源に関する何らかの情報も含まれる可能性のあるベンヌ表面でのサンプル採取も実行され、もうすぐ地球に帰還するカプセルの中には約60gのサンプルが入っていると考えられている。

ちなみにベンヌは、地球にとっては潜在的に危険な物体でもある。その軌道は直近では2182年に地球に最接近し、衝突する可能性もあるという。ただし現時点では、ベンヌが2300年までの間に地球に衝突する確率は1/1750と算出されており、宇宙の物差しで計ればかなり高い方かもしれないものの、実際に衝突することはないと考えられている。

また、仮に地球に衝突しても、その地域の被害は甚大にはなるものの、過去に恐竜を絶滅させた小惑星の衝突に比べると規模は小さく、大量絶滅を引き起こすには至らないだろうと考えられている

NASAはサンプルリターンを含め、この小惑星をさらに研究するにつれて、その軌道がどこに向かっているか、より安全に予測できると述べている。また、小惑星にインパクターをぶつけてその軌道を変えるD.A.R.T.ミッションの成功などもあり、必要な場合にはこの小惑星の軌道を変えることも、可能になりつつある。

OSIRIS-REx探査機はベンヌのサンプルを投下した直後、今度は地球と金星の間の軌道を周回する小惑星アポフィスを目指す旅に出発する。これに伴い、同ミッションの名称は、OSIRIS-APEX(オサイリス・エイペックス)に改められることになっている。アポフィスへの到着は2029年の予定で、約18か月間の調査を行う。

地上で回収された小惑星サンプルは、10月11日水曜日にヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターでメディアに公開される予定だ。

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