ハリウッド俳優とAIに対する危機感は共有

米俳優組合、ゲーム業界に対してもストライキの動き。AIによる演技の使い回しに規制求める

Image:Gorodenkoff/Shutterstock.com

全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の理事会は、ビデオゲーム企業10社に対するストライキを承認するよう組合員に要請することを全会一致で可決した。同組合は契約交渉において、現場での保護やAIの規制、適正賃金に関する組合員のニーズに企業が「対処しなかった」と主張している。

SAG-AFTRAは米国の俳優約16万人が加入しており、WGA(米脚本家組合)と共に映画会社やテレビ局、Netflix等の配信プラットフォームに対して、数か月にわたって続くストライキを主導している。

今回の動きはそちらとは別ものだが、インフレに対応した賃金の改善や「人工知能の無制限な使用」に対する保護を求めるという点では似ている、とプレスリリースでは述べている。また、あくまで「ビデオゲーム出演者」つまり役者を代表したものであり、プログラマーなどゲーム開発者は含まれていない。

今回のストライキの発端となったインタラクティブメディア協定は、20年以上も前に締結されたものだ。Activision Productions、Epic Games、Warner Bros. Games.を含む大手ゲームパブリッシャー10社における雇用を対象としており、当初は昨年11月に失効する予定だったが、組合と企業が合意に至らなかったため、1年間延長された。

SAG-AFTRA側は、AIによるパフォーマンス・キャプチャー(俳優の動きや表情、しゃべり方のデジタル記録)活用につき規制を要求。俳優がセンサーやカメラを装着したスーツを着用し、顔にマーカーを施すことで、演技全体をCGに反映する技術である。同組合は「規制のないAIの使用は、これらのアーティストの仕事に甚大な脅威をもたらす」と主張している。

またAI規制の改善を求める要求は、ゲームにおける声優にも及んでいる。AI音声合成アプリは広く市販されているほか、すでに仮想キャラクターと会話できるAIコンパニオンアプリにも使われている。

そうした背景から「脅威はここにあり、実在する。契約上の保護がなければ、雇用者側は役者に対し、芸術性や生計の消滅に知らず知らず加担するよう求めている」のも同然だとSAG-AFTRAは訴えている。

実際、ハリウッドのストライキでも、俳優達は撮影現場で3Dスキャンされたとして、AIに取って代わられる懸念を表明している。今やゲームとテレビ・映画とは「デジタル技術で作り込まれた映像」として地続きであり、同じ問題意識が持たれるのは自然なことだろう。

今回のストライキ承認投票は、ビデオゲーム業界の組合化を求める大きな動きの中で起こったものだ。先日セガ・オブ・アメリカの従業員らは、91対26で組合結成を支持していた。またマイクロソフト傘下のZeniMax Studios(『Elder Scrolls』や『Fallout』、『Doom』シリーズを開発) のゲームテスターらも、昨年末に労組結成を可決している

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