この種類の惑星は「ホットネプチューンデザート」と呼ばれます
海王星相当の大きさながら、非常に重い太陽系外惑星が見つかる。質量は地球の約73倍
地球から見て、うしかい座の方角約544光年のところにあるTOI-1853は、太陽の約80%の直径と質量を持つ恒星だ。そして、天文学者らはこのオレンジ色の矮星をわずか30時間で公転する惑星「TOI-1853 b」を新たに発見し、Nature誌に報告した。
この惑星は、公転周期や惑星によって遮られる恒星の光の量の組み合わせなどから、その直径が地球の約3.46倍で、地球の約3.8倍の直径を持つ海王星よりもやや小さいサイズの惑星であることが判明した。またカナリア諸島のなかのラ・パルマ島にある、イタリアのガリレオ国立望遠鏡を使って、TOI-1853 bの恒星に対する引力の強さを測定したところ、科学者たちはこの太陽系外惑星の質量が地球の約73倍であることがわかった。
つまり、TOI-1853 bの密度は海王星の約6倍、地球のほぼ2倍もあり、これまで知られている中で最も密度の高い海王星サイズの惑星と言うことができる。
これまでに発見されている太陽系外惑星のなかで、海王星に近いサイズの惑星は珍しくはない。しかし「TOI-1853 b」は、あまりに主星に近いせいで、その表面の大気は主星からの強力な恒星風によって吹き飛ばされ、岩石質のコアだけが残った状態のいわゆる「ホットネプチューン・デザート」と化していると推測される。
また、この大きさの惑星としてはこれまでに例を見ないほど主星に近いことから、イタリアのガリレオ国立望遠鏡を用いて惑星に影響する重力の強さを調べたところ、TOI-1853 bの質量が実に地球の約73倍、海王星の約4倍に相当することがわかった。
これまで発見された惑星は、ほとんどの場合TOI-1853 bと同じくらい恒星に近い軌道を周回する系外惑星は、直径が地球の2倍もない岩石惑星か、地球の直径の10倍を超える巨大なガス惑星、いわゆるホットジュピターのいずれかだった。研究主著者でローマ大学の天体物理学者ルカ・ナポニエロ氏は「TOI-1853 bの発見は、大きな惑星にはこれまで考えられていたよりもはるかに多い、驚くべき量の重元素が存在する可能性があることを示唆している」と述べ「海王星サイズの惑星は驚くほど多様な密度と組成を示すものだが、われわれはこれほどコンパクトで高密度のものまで存在するとは思ってもみなかった」と語った。
また「惑星形成に関する従来の理論では、TOI-1853 bは存在しないはずだ」とナポニエロ氏は述べる。しかし、明らかにTOI-1853 bはそこに存在するため、この惑星は通常とは異なる形成過程を経たと考えるほうが自然かもしれない。
ナポニエロ氏は「スーパーアースなどの大きな原始惑星同士が衝突して生まれた可能性」もあると考えている。巨大な惑星同士が衝突したことで、それぞれが持っていた大気や水の一部が失われ、主に岩石だけが残ったのではないかと推測することは可能だ。そして、それがもし正しければ「TOI-1853 bの近くには、兄弟惑星が潜んでいる可能性が高い」とナポニエロ氏は続けた。
その他に考えられる仮説としては、この惑星がもともとは非常に偏心した、または大きな楕円軌道を周回しており、あるとき定期的に接近する主星の重力に捉えられて現在の軌道に引き寄せられた可能性もあるかもしれない。非常に恒星に近い軌道に取り込まれた結果、惑星は大気の大部分を失い、非常に密なコアだけが残ったと考えられる。恒星に接近しすぎた結果、最終的に惑星の軌道が時間とともにより円形に近づく可能性は十分に考えられ、現在の軌道の軌跡を説明できるとのことだ。
なお、研究者らはTOI-1853 bが主に岩石質であると考えているが、別の可能性としては、この惑星が岩石と水が半々ぐらいの割合で構成されることも考えられるとしている。この場合は水は惑星の極端に高い温度によって厚い水蒸気の層が星を取り囲んでいるかもしれないという。ただ、ナポニエル氏は「われわれはその大気が非常に薄い、もしくはまったく存在しないと予想している」と述べている。このあたりに関しては今後の研究で明らかになるかもしれないが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使っても、おそらく詳しく調べるのは困難とのことだ。
- Source: Nature
- via: Phys.org Space.com Ars Technica