映画業界はストライキが長引いています

人気歌手ホージア、生成AIによる「音楽業界への脅威」を巡りストライキを検討

Image:Ben Houdijk/Shutterstock.com

アイルランドの人気歌手ホージアは、音楽業界に迫る人工知能(AI)の脅威に対処するため、ストライキを行う意思があることを明らかにした。現在、映画業界ではAIを使うことの対する契約内容の改善や権利保護を巡る論争のため、脚本家や俳優たちがストライキを行っている。ホージアの懸念は、同じようなことが音楽業界でも起こることを懸念してのものだ。

ハリウッドで起こっているストライキの争点のひとつは、俳優をAIでデジタルコピーし、俳優本人が関わらずとも映画やその他の作品に出演させられる可能性があることだ。

音楽業界でもこの4月、ラッパーのドレイクやザ・ウィークエンドの声をAIで模倣し「Heart On My Sleeve」という楽曲を歌わせる動画が公開されて一時大きな話題になった。この動画は程なくしてレコード会社からの要請により削除されたが、その後人気音楽アーティストの声をAIで模倣させ、他のアーティストの楽曲を歌わせるような動画が数多く作られ、公開されている。

ホージアは、英BBCのインタビューでAIの真の芸術的性質についての話題が出たところで、「AIが芸術かどうかは、ほぼ哲学的な議論だと思う」と述べ、AIには芸術の創造においてしばしば基本的な事柄である人生経験がないため、それを表現に込めることができないと指摘した。また、そのようなAIが生成するものが、芸術の定義に当てはまるかどうかに疑念を投げかけた。

そして、音楽へのAIの脅威に対して、映画業界のようにストライキを行うことは想像できるかと尋ねられたホージアは、「その問題に対する行動があれば、団結して参加するかって? 絶対に(参加するだろう)」と答えた。

生成AIには楽曲を作曲したり、既存のアーティストの雰囲気を模倣したりできるようになる可能性があり、そうなった場合の芸術的なオリジナリティや著作権の問題に関する懸念が高まっている。

音楽ストリーミングサービスのDeezerは、AI生成の音楽コンテンツの台頭に伴い、合成声を使用して既存のアーティストを模倣する楽曲を特定(タグ付け)する技術の導入を目指す考えを明らかにしている。タグ付けは、まずはアーティストをAIで模倣した声を使用している楽曲から始め、生成AIによって制作された音楽全体にタグを付けていく意向だ。これらのタグは、アーティストやレーベル、ユーザーにコンテンツの正当性について情報を提供し、不正行為に対抗し、さまざまな形式の音楽制作を認識する報酬モデルを容易にする役割を果たすとDeezerは説明している。

一方で、生成AIを音楽コンテンツ製作に使用できるようにする考えも業界内の一部にはあるようだ。Financial Timesは先週、GoogleとUniversal Musicが、AIによって生成された楽曲にアーティストのメロディと声をライセンスすることを可能にすべく交渉していると報じている。

ちなみに、冒頭に述べた米映画業界でのストライキは、8月15日に映画会社、テレビ局、配信業社などの業界団体AMPTPが、態度を軟化させて脚本家組合のWGAに対案を提示し、両者の交渉を再開する運びとなっている。

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