共著者らはKwon氏を除いた論文を直後に公開していました

「LK-99」論文が共著者の承認なく公表された疑い。韓国・高麗大学校が調査中

Image:Hyun-Tak Kim (CC BY 4.0)

先日、韓国の研究チームが査読なしの論文サーバーarXivに発表した常温超伝導体「LK-99」は、発表のとおりなら現代物理学を再定義するほどの大発見といわれた。だが、その後各国の研究者らが検証したところ、論文の主張にはところどころ矛盾が指摘され、どうやらLK-99は人々が期待したようなものではないことが判明してきている。

そして、論文の内容が事実でないとして、韓国・高麗大学校は研究を最初に発表したYoung-Wan Kwon教授に対する調査を開始したことを明らかにした。Kwon教授は、共著者の同意を得ることなく、「LK-99」が常温超伝導体だとする論文をarXivに投稿したとされている。高麗大学校はこの件に関してすでに調査を開始しており、約半年後に結果が報告される見込みだと述べた。

なお、Kwon教授が最初にLK-99の論文を投稿してから少し後に、共著者のSukbae Lee氏とJi-Hoon Kim氏、ほか4人の名前を含むLK-99に関する2番目の論文がやはりarXivに投稿されており、こちらにはKwon教授の名前が載っていない。いずれの論文も通常の室温および通常の圧力環境下で抵抗なく電気を伝導できる、新しい材料LK-99を開発したと主張している。

研究共著者のひとりで、米バージニア州にあるウィリアム&メアリー大学の研究教授Hyun-Tak Kim氏は、Kwon教授が共著者の同意を得ずに投稿されたことに対抗する意味合いで、2番目の論文が投稿されたことを認めているという。

論文ではLK-99は銅、鉛、リン、酸素の化合物で、摂氏127度までの温度で超伝導体として機能すると主張されている。しかし、他の科学者たちがその材料とその性質を再現しようとした試みはいずれも成功せず、科学誌Natureは16日に掲載した記事で、明確にこの夢の化合物が常温・常圧における超伝導体ではないと結論づけた。

Natureは「銅硫化物のような不純物が、電気抵抗の急激な低下と磁石の上に部分的な浮揚を引き起こす性質」を備えることを指摘し、論文とともに浮揚の様子を示した動画も公開されたLK-99は、これに類似するものであるとした。

カリフォルニア大学デービス校の物性物理学者Inna Vishik氏はNatureに対し「この時点で(LK-99にまつわる)事がかなり決定的に解決されたと思われる」と述べた。LK-99への懐疑論は米メリーランド大学のCondenced Matter Theory Centerや、韓国超伝導低温物理学会(KSSC)などからも出ており、学術的な検証不足と主張による影響の広さを懸念する声があがっている。

もし常温・常圧での超伝導体が本当に見つかっていれば、たとえば電力送電網の電気抵抗による損失がなくなり、二次電池の性能は飛躍的に向上し、コンピューターは途轍もなく高速化することが可能になるだろう。まさに世の中が一変する大発見となるはずだ。今回は残念ながら、そうではなかったようだ。