Another Brick in the Wall (Part 1)

脳波から“聴いている音楽”を再現する実験が成功

Image:Sergey Novikov/Shutterstock.com

カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の研究者は、被験者29人に電極がついた脳波プローブを装着し、ピンク・フロイドの名曲「Another Brick in the Wall (Part 1)」を聴かせた際の脳波からその楽曲を、それとわかるレベルで再現することに成功した。

従来、コンピューターアルゴリズムを使用して話し言葉を再現する試みは行われてきている。脳波をそのまま音に変換しても、通常はなにかを認識できる音にはならないが、アルゴリズムで脳波中のパターンを読み取ることで、被験者の聴覚的な信号を読み取ろうという研究だ。

今回、研究者たちは音楽を聴かせることで反応する脳の領域を調べ、そのメカニズムの解明にあたった。話し言葉と音楽がそれぞれ伝えている(または伝えていない)リズムやメロディ、アクセント、イントネーションなどの再現ができれば、将来この技術を応用して、脳卒中や何らかの理由による麻痺で言語コミュニケーションの問題を抱える人が、人との対話をしやすくなる発見につながるかもしれない。

そして、この実験の結果、聴かせていた音源そのままとはいかないものの、音楽を聴いたときにそのリズムに反応する、未知の脳のメカニズムを解き明かすことができたと研究者は述べている。

UC Berkeleyの心理学教授ロバート・ナイト氏は、音楽には「抑揚と感情的な内容」が含まれていると述べ、脳機械インターフェース分野がもっと進歩すれば「将来脳インプラントに音楽性を追加する方法が提供可能になる」とした。たとえばALSなどの障害を持つ人や、言葉を話すのが困難になる神経学的または発達面の問題を抱える人が、言語的な内容だけでなく、話し言葉の抑揚だったり、感情のニュアンスのようなものを解読できるようになるかもしれない。

実験では、2668個の電極の内347個が音楽への脳の反応を捉えた。これで特定の音・リズム(実験ではギターのリズムを捉えた)に反応する脳の部位がわかり、脳波から音楽をある程度再現できたという。またこれらの電極を取り除くと、脳波からの音の再構築ができなくなったことから、特に音楽の抑揚などの面でこの領域が重要な要素を占めていることが示唆されたとのこと。研究者らは将来、この領域への脳インプラントで音楽や音声のリズムとメロディに関する知覚を高められる可能性があるとした。

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