新型コロナのデータを利用して予測を実施

「次のパンデミック予想AI」の研究進む。大量感染前に警告できる可能性も

Image:Alex_Traksel/Shutterstock.com

米国のScripps Researchとノースウェスタン大学の科学者が、将来の危険なウイルス変異の出現に警戒し、備えるため事前に警告を発することができるAIの開発を進めている。

Early Warning Anomaly Detection(EWAD)と名付けられたこのAIシステムは、新型コロナが拡散を追跡した実際のデータを用いて機械学習とテストを重ね、ウィルスの変異に伴って、新たな警戒すべき変異体がどのように出現するかを予測するようになっている。

AIには変異体の遺伝子配列に関する情報、感染の拡散のしかた、変異体出現の頻度、世界的における新型コロナの致死率などがパラメーターとして与えられ、ウィルスの遺伝子の変化による感染率や死亡率の増減として予測を示す。

ジャーナル誌Cell Patternsに掲載されたこの研究の共著者で、Scrippsの微生物学者のWilliam Balch氏は、試験運用において「トリガーとなる遺伝子変異の出現、致死率の変化など、これらの変異体がWHOによって公式に指定される数週間前には、すべて起こっていたことがわかった」と述べた。

説明によると、このAIは連続時間確率過程の一種であるガウス過程をベースする空間共分散による推定という手法を採用している。そして実際に起こった現象に対してモデルをテストし、実際のデータと予測データとの間に近い一致を見つけることで、ワクチンやマスク着用などの対策が、ウイルスの進化にどのように影響するかを予測するEWADの効果も証明できたという。

研究者らは、AIアルゴリズムが、通常は検出できないようなウイルスの進化の「パターン」を検出できるようになり、これが新たに発生するであろう将来のパンデミックへの対策として重要な役割を果たす可能性があると述べている。

Scrippsの数学者で研究共著者でもあるBen Calverley氏は、「このシステムと、基盤とする技術的手法には、将来的にさまざまな応用の可能性がある」と述べた。

ワクチン接種が進んだ結果、すでに多くの人が新型コロナは過去のものという認識になっているしれないが、感染そのものは現在も拡がっており、いつまた強力な変異体が現れるとも限らない。また新型コロナに続くまったく新しい未知の感染症が拡散し始めたときにAIシステムがあらかじめこれを把握できるようになれば、対策となるワクチン開発などももっと早くなると考えられる。

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