「1度だけの恩赦」はハードル高し

テスラ、購入済み自動運転オプションを新車に引き継げる移行措置。ただし約2ヶ月間の納車限定

Image:Jose Gil / Shutterstock

テスラが、Full Self-Driving(FSD)オプションを購入済みのテスラ車オーナーが新しいテスラ車に買い替える際に、FSDを再購入することなく新車に引き継げる対応を行うと発表した。この対応は、以前にFSDオプションを購入済みで、買い替えの新しいテスラ車の納車を7月20日から9月30日までの約2ヶ月間に受けるテスラオーナーを対象とする。

FSDオプションは2016年、将来的に完全自動運転を実現するとのふれ込みで発売された。当初は割引価格として5,000ドルで販売されたものの、現在新規で購入するには最大1万5000ドルが必要になる。

FSDソフトウェアは年々更新されており、その機能も追加されているものの、いまだベータ版の扱いで、自動運転の度合いを示すレベルは、ドライバーが常にハンドルを握って周囲に気を配る必要がある「レベル2」の域を出ていない。

FSDを購入していたものの、それがベータ版でなくなる前にクルマを買い替えることになったオーナーの立場からすれば、完全自動運転がいつ実現するのかもわからず、さらに以前の3倍もの値段になったFSDを再度購入しようとはなかなか思えないだろう。今回のオファーについて、イーロン・マスクCEOは「1度だけの特典」だと述べている。

ただ、これが本当に特典と言えるのかについては異論が噴出しそうだ。上に述べた通り、まずFSDは約束した機能を提供できていない。そのうえ、いまから約2ヶ月のあいだに新車の納車を受ける必要があるという条件では、これから新車購入のオーダーを出しても、間に合わない可能性が高い。

とすると、とにかくFSD引き継ぎの恩恵を受けたければ、すぐに納車できる店頭在庫を探して購入するほかなく、テスラは顧客に対して駆け込み需要を掘り起こしているだけとも言えそうだ。

なお、テスラはこのオファーを受ける場合、納車予定日の1週間前までに、今乗っているテスラ車からFSDを取り外す必要があるとしている。そして、その後に新車購入をキャンセルし、今のクルマに乗り続けることを選択した場合、テスラはFSD機能を返還しないという。また、テスラは納車期日を保証していないため、何らかの問題によって納車日がプロモーション期間を逸してしまうと、結局新車にFSDを移行できないかもしれないことが指摘されている。

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