パルサーやマグネターにしてはもっさりしすぎ

約22分おきに電波を発する“謎の天体”が見つかる。30年以上誰も気づかず

Image:ICRAR

今週水曜日、天文学者らは地球から1万5000光年離れたところにある、非常に独特な天体を発見したことを科学誌Natureに報告した。

GPM J1839-10と名付けられたこの特異な天体は、約22分周期で約5分間、強力な電波を発することがわかっている。定期的にパルス状の電波を発する天体としては「パルサー」の存在が知られている。しかし一般的なパルサーは高速で回転しており、数秒から数ミリ秒という非常に短い周期でパルス状の強い電波を発する。約22分というゆっくりした周期で電波を発する天体というのは、これまでほとんど見つかっていなかった。

しかも研究者らが観測データを過去にさかのぼって調べてみたところ、この不思議な天体は30年以上にわたり、ずっと約22分周期で電波を発していたことがわかった。そして、誰もそのことに気づいていなかった。

オーストラリア・カーティン大学と西オーストラリア大学が設立した国際電波天文学研究センター(ICRAR)の天体物理学者ナターシャ・ハーレイ=ウォーカー氏らのチームは、この他に例を見ない謎の天体について、おそらく非常にゆっくりと自転する「マグネター」の一種ではないかと推測している。パルサーもマグネターも、恒星が超新星爆発を起こした後に残った中性子星の一種だが、マグネターはパルサーに比べて1000倍以上の磁力を帯びているのが特徴だ。ただ、仮にこの天体がマグネターだとしても、約22分に1回という電波の発信周期を説明することはできない。

実は今回の発見以前にも、約18分ごとに約1分間電波を発する天体GLEAM-X J162759.5−523504.3が観測された例がある。しかしこの天体は2018年の2か月間だけ観測された後に消滅してしまった。

Image:ICRAR

研究チームは、この不思議な天体について何か手がかりはないかと、GPM J1839-10の存在する座標を観測したアーカイブデータをさかのぼって詳しく調べた。その結果、GPM J1839-10が少なくとも1988年から周期的な電波の発信を続けていることが判明したという。また新しく実施した観測により、磁場による変化を示唆するデータが得られ、特徴的な電波の放出を特徴付けることができた。

GPM J1839-10が発する電波の特徴は、マグネターが発するものによく似ている。しかし、約22分(1320秒)というゆっくりな周期のうちの、約400秒の範囲で30~300秒のあいだ継続して電波を発するというのはマグネターとは異なる特徴だ。また、この電波を発している時間内にも、電波の強度は変動し、細かいサブバーストのようなものも起こっている。さらに、まれにウィンドウに差し掛かっても電波を発しないときもある。

マグネターでないとした場合に考えられる説明は、GPM J1839-10が異常に強い磁場を持つ白色矮星である可能性だ。マグネターよりも大きな中性子星であれば、回転速度の遅さは説明できる。ただ、天文学者がこれまで天の川銀河をくまなく観測してきて、これと同類の天体で30年以上も電波を発している例は見つかっていない。

あまりに現象が特異であるせいで、他にも同様の天体があるにもかかわらず、これまでの観測ではその特徴が把握される前に見過ごされてきた可能性は考えられる。GPM J1839-10のような特徴をつかむには、観測機器を1つの領域に対して30分以上継続してデータを採取し、さらに複数の信号強度に分けて、オン状態とオフ状態の両方を確実に捉える必要があるからだ。ハーレイ=ウォーカー氏は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使ってGPM J1839-10を詳しく調べたいとの希望も持っているが、長時間の独占的な観測を確保することはなかなか難しいとのことだ。

研究チームは今後もGPM J1839-10の調査を続け、その秘密を解明するとともに、同様の例をさらに探し続ける予定だ。

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