USB-C統一法よりも反発は大きい?

欧州理事会、スマホに「交換が簡単なバッテリー」搭載を迫る新規則。期限は2027年まで

Image:Parilov/Shutterstock.com

欧州理事会は、バッテリーおよび廃棄されるバッテリーに関する新規則を採択した。先月中旬、欧州議会が圧倒的多数で可決した「スマートフォン等のバッテリーを“簡単に”交換できる」規制案を承認した形であり、アップルやサムスンなど様々なハイテク企業に将来の製品での対応を迫るものだ。

この新規則は、持続可能性を念頭に置きながら、廃棄される携帯用バッテリーや工業用バッテリー、電気自動車やeスクーターを含めて、すべてのバッテリーに適用される。

アップルをはじめとした大手スマホメーカー各社を直撃するのは「電気製品に組み込まれたモバイル電池は、エンドユーザーが取り外して交換できるようにすべき」と定めていることだ。期限は2027年までとされ、「事業者が製品の設計をこの要件に適合させるのに十分な時間を残している」とのこと。つまり、実際にスマホの設計を見直すよう迫る構えである。

ここでいう「交換できる」の定義とは、具体的には「市販の工具を使うことで取り外しでき、無料で提供されるほかは特殊な工具の使用を必要とせず、また分解するために独自の工具、熱エネルギー、溶剤などを必要としない」ことを意味する。それがいかに現在のスマホ設計とかけ離れているかは、修理業者iFixitのiPhone 14 Pro分解レポートを見ても分かるだろう。

おそらくアップルやサムスン等は、激しく反発するだろう。特にアップルは、EUがスマホを含む家電製品の充電規格をUSB-Cに一本化する「USB-C統一法」の制定に動いていた際も、「技術革新を抑制する」との声明を出していた。

結局、今年の「iPhone 15」シリーズ全モデルがUSB-Cに移行することで従うとみられているが、それは同社がワイヤレス充電のMagSafeに重きを置く方針と矛盾しない事情も大きいはず。が、スマホ内蔵バッテリーが交換困難な設計となっているのは、ユーザーに求められる防水性能とも密接な関係があり、容易くは譲れないはずだ。

この新規則と並行して、廃棄バッテリー回収の具体的な目標をメーカーに義務づけている。2027年までに63%、2030年までに73%とのこと。リチウム回収も要件に含められており、2027年までに50%、2031年までに80%の回収が目標とされている。

不要になったモバイルバッテリーの廃棄に関しては、頭を痛めている人も少なくないだろう。不燃ゴミとしても捨てられず、ゴミ収集車に積み込まれたリチウムイオン電池での火災も多発しているなか、日本でも同様の法整備が求められるかもしれない。

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