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アクティビジョン・ブリザードの買収差止訴訟、マイクロソフトがFTCに勝訴

Image:FellowNeko/Shutterstock.com

米連邦地裁は、FTC(米連邦取引委員会)がマイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザード買収計画の差し止めを求める訴えを棄却した。これにより、ハイテク史上最大といわれる687億ドルもの買収は、実現に向けて大きく前進したことになる。

この買収計画に関しては、家庭用ゲーム機市場などの競争を歪める恐れがあるとして、一部諸国の規制当局が問題視していた。主な焦点の1つが超人気IP「Call of Duty」であり、自社Xbox以外のプラットフォームが独占するとの疑いを晴らすため、マイクロソフトは任天堂ハードや他社クラウドゲーミングサービスに新作を10年提供するといった契約を次々と締結していた

判決のなかでジャクリーン・スコット・コーリー判事は、こうしたマイクロソフトの動きに言及。その上で「FTCがこの特定業界(家庭用及びクラウドゲーム業界)における特定の垂直合併(マイクロソフトのアクティビジョン買収)が競争を実質的に阻害する可能性があるとの主張につき、勝訴する可能性を示していないと判断する」とのこと。

それどころか「CoDを初めとするアクティビジョンのコンテンツに消費者がアクセスする場が増えることを示す」として、仮差し止めの訴えを却下している。

またコーリー判事は、マイクロソフトの「Nintendo SwitchはXbox(およびPS5と)同じ市場である」との主張につき、基本的には同意しつつも、FTCがそうではないと主張することにも理があると認めている。

なぜ、これが主要な論点の1つになったのか。それは大成功を収めたスイッチがXboxと同じ土俵に立っていれば、マイクロソフトがゲーム市場で負けていることが強調できるためだ。結果として、反トラスト法(独占禁止法)の裁判では有利になる。

この判決を受け、マイクロソフトのブラッド・スミス社長は声明で「この迅速かつ徹底的な決定を下したサンフランシスコの裁判所に感謝するとともに、他の司法管轄区がタイムリーな解決に向けて努力を続けることを望む」と述べている。

また、Xbox事業トップ(裁判では重要参考人)のフィル・スペンサー氏も、反応をツイート。「我々に有利な判決を迅速に下してくれた裁判所に感謝している」と謝意を表明し、FTCの主張はゲーム市場の現実を反映していない、とコメントしている。

かたやFTC側は、今後数日の内に「競争を守り、消費者を保護するための戦いを続けるための次のステップを発表する予定だ」と表明している。

この判決からまもなく、英競争市場庁(CMA)とマイクロソフトは、英国での法廷闘争を一時中断し、CMA側のクラウドゲーミングに関する懸念に対処するため、買収契約をどのように修正できるかを交渉することで合意した。CMAは4月に買収計画の阻止を発表していただけに、こちらも姿勢を軟化させた印象がある。

FTCは7月14日まで、この判決を不服として上訴できる。だが、同局はMetaのWithin(VRフィットネスアプリ企業)買収差止訴訟で敗訴した際に上訴しなかったこともあり、このままマイクロソフトのアクティビジョン買収に何のアクションも起こさない可能性がある。

今回の訴訟では、マイクロソフトとFTCともに主張を裏付けるために、様々な機密文書の提出や証人の発言があり、そこからは「Nintendo Switch後継機の性能はPS4くらい」や「PS5 Slimは今年後半に発売」などの憶測も飛び出していた。それが終わりを告げるのは、少し寂しいかもしれない。

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