ゲーム以外にも使える1台
次世代携帯ゲーミングPC「AYANEO 2S」レビュー。「Ryzen 7 7840U」で進化
ここ数年で徐々に数を増やしている、ディスプレイの左右にコントローラーを搭載するゲーミングUMPC(ウルトラモバイルPC)。そのきっかけになったのが、AMDのRyzen 7 6800Uの登場だったと言っていいだろう。その後継となるRyzen 7 7840Uを搭載したUMPCも各メーカーから発表されてきており、ゲーミングUMPCが第2フェーズに入ってきたという印象がある。
AYANEO社のAYANEO 2Sは、そのRyzen 7 7840Uを搭載するゲーミングUMPCだ。現在、海外クラウドファンディングサービスのIndiegogoで先行予約を実施しており、日本ではハイビームから8月上旬に発売が予定されている。
スタイリッシュな7インチゲーミングUMPC
AYANEO 2Sは、7インチで解像度1920×1200ピクセル(323PPI)のディスプレイを搭載するUMPC。筐体前面とディスプレイにつなぎ目がなく、1枚のガラスで覆われているデザインが特徴だ。
本体サイズは約264.5×105×21.5~36.1mmで、ROG Ally(280.0×111.38×21.22~32.43mm)より一回り小さい。前モデルとなるAYANEO 2からデザインは変わってはおらず、筐体サイズも同一。ただ、CPUがRyzen 7 7840Uになったことに伴い、冷却機能が強化されている。上部にある排気口もサイズが拡大し、瞬間的なエアフローは35%向上しているとのことだ。
インターフェースは上面にUSB4(Type-C)とUSB3.2(Type-C)、ボリューム、電源ボタン。電源ボタンは指紋センサーも備えており、Windows Helloに対応している。
下面にUSB4(Type-C)、microSDカードスロット、3.5mmジャックを備える。ROG AllyはUSB 3.2(Type-C)が1つだけとインターフェースが少なく、充電しながら周辺機器を繋いだり、映像を出力したりするには別売アクセサリーのGaming Charger Dockなどを用意する必要があったが、AYANEO 2Sは計3ポートのUSBが利用できるので、そのあたりの問題はない。
microSDカードスロットは、片側を押し込むとシーソーのように蓋が開く構造になっている。スロットむき出しやゴムの蓋が使われることも多いmicroSDカードスロットだが、なかなか凝った構造だ。
本体は表にネジが一切でない設計になっているが、側面のカバーを外すとネジにアクセスできる。このネジを外すことで本体を分解し、SSDなどを交換できるようだが、今回はそこまでは試さなかった。Indiegogoでの情報によると、最大8TBのSSDに対応しているようだ。
ゲームコントローラーとしては、左右のスティックに十字キー、A/B/X/Yボタンという一般的な構成。上面ショルダーボタンの横には、単押しと長押しにそれぞれ機能を割り当てられるカスタムショルダーボタンが配置されている。ゲーム中に利用するといったものではなく、「デスクトップを表示する」「スクリーンショットを撮影する」「タスクマネージャーを起動する」など、キーボードがないAYANEO 2Sに便利なショートカットが登録可能になっている。
AYANEO 2Sは、専用のAYA Spaceというユーティリティツールを利用することで、TDPやファンスピードの変更、システム状態のモニタリングなどが行える。また、各ボタンのカスタマイズなどにも対応する。
性能をベンチマークで確認
冒頭にも書いたように、AYANEO 2SはCPUに「AMD Ryzen 7 7840U」を搭載している。これは、ROG Allyに搭載する「AMD Ryzen Z1 Extreme」と同じZen 4アーキテクチャの8コア/16スレッドCPUで、GPUは12CUとなっている。
Z1 Extremeとの大きな違いは、Ryzen AIと呼ばれるAI専用のアクセラレーターを搭載している点。AMDによると、このRyzen AIによりマルチタスクの高速化やビデオ画質の向上などのメリットがあるという。とはいえ、ゲーミング用途であればあまり恩恵はないかもしれず、ROG AllyがRyzen AIを削除したRyzen Z1 Extremeを採用しているのもこの辺りが理由だろう。
ここからは、各種ベンチマークでAYANEO 2Sの性能を確認していこう。下記のテストでは、すべてTDPを33W、ファンスピードを最大の「暴れる」に設定して行っている。
なお、今回使用しているAYANEO 2Sは、RAM32GB/ストレージ2TBのモデルだ。本来、ATANEO 2SのRAMは7500MHzで動作するのだが、サンプル機では低TDPで使用した際にシステムが不安定になるとのことで、6400MHzに制限されていた。
まずはCPUの性能を測るCINEBENCH R23だが、シングルコアで「1766pts」、マルチコアで「13640pts」。筆者が以前にROG AllyのTDP30W設定で計測した際には、それぞれ「1725pts」と「13208pts」だったが、この程度は誤差と考えて良いだろう。
次に、PCの総合的な性能を測るPCMark 10だが、トータルスコアは「6321」、ブラウザ利用やアプリの立ち上がりなど日常的な作業のスコアであるEssentialsは「9515」、オフィス作業のProductivityは「8830」、写真や動画編集をともなうDigital Content Creationが「8158」となった。こちらも過去にROG Allyで計測したスコアとほぼ同等だ。
次に、3D性能を測る3Dmarkベンチマークを実施した。比較対象として、ROG AllyをTDP30W(Turboモード+AC接続)で動作させた際のベンチマーク結果も掲載する。この結果でも、ほぼ同等のスコアとなっている。
続いて、3Dゲームのベンチマークとしては比較的重めな「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」を実行してみた。設定としては、フルHD(1920×1080)解像度のフルスクリーン表示で軽量品質、標準品質、高品質をそれぞれ計測している。この結果をみると、AYANEO 2Sのスコアが若干良いようだが、この辺りはメモリサイズの差(AYANEO 2Sは32GB、ROG Allyは16GB)があるのかもしれない。
なお、解像度をHD(1280×720)に落とした場合、軽量品質では「7137(快適)」との結果になった。このスコアであれば、重めのAAAタイトルであっても設定次第ではかなり快適に遊べるだろう。
最後に、バッテリー持ちについても触れておこう。AYANEO 2Sは50.25Whと、ROG Allyの40Whよりも大容量のバッテリーを搭載している。PCMark 10のバッテリーベンチマークを試したところ、TDP33W設定のGamingでは1時間11分となった。なお、ブラウザなどの一般的なPC用途となるModern Officeでは、3時間20分、動画視聴のVideoでは2時間59分という結果だ。
TDPを下げればもう少し稼働時間を伸ばすことも可能だ。TDP15WでGamingを試したところ、1時間41分という結果だった。ただし肝心のゲームを楽しむことが難しくなる可能性もあるため、外出先でゲームをしようと思ったら、モバイルバッテリーなどの準備は必須と言っていいだろう。なお、充電はPD65Wに対応している。
ゲーム以外にも使える1台
性能面ではROG Allyと大きくは変わらないが、一回りコンパクトな筐体と一枚ガラスのスタイリッシュなデザイン、そしてなにより豊富なポート類が、AYANEO 2Sの魅力となっている。
約20万円という価格を考えると、ゲーム用途だけではなく通常のPC作業でも使いたいと考える人もいるだろう。ポートが豊富なAYANEO 2Sなら別途ハブを用意しなくても周辺機器が接続できるので、活用の幅は広そうだ。