Wiiと後方互換性のあったWii Uは大失敗の前例もあり

任天堂社長、“Switch次世代機”に言及。後方互換性も示唆か

Image:Matthieu Tuffet/Shutterstock.com

任天堂のゲーム機Nintendo Switchは大成功を収めながらも、すでに発売から7年目を迎えており、そろそろ後継モデルが登場しても不思議ではない。先月発売された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』も広大なオープンワールド+自由度の高いクラフト機能が高評価を集めているものの、一部シーンではフレームレートが下がるなどハードウェアの限界もかいま見えていた(それでも不評はほとんどないが)。

そんななか、任天堂の古川俊太郎社長が次世代機に言及し、後方互換性、つまり「スイッチのソフトも動く」可能性を示唆する発言をしたことが注目を集めている。

任天堂は6月27日、「第83期 定時株主総会 質疑応答」を公開した。23日に行われた株主総会での、株主と古川社長の質疑応答をまとめた文書である。これまで任天堂はスイッチ後継モデルへの言及を避けてきたが、今回は「将来のハードウェア」や「次世代機」の存在を前提とした回答が述べられている。

古川社長は、まずNintendo Switchで購入したダウンロードソフトの引き継ぎに関しては「将来のハードウェアの仕様について、常にさまざまな検討を行っていますが、この場において将来のハードウェアに関する具体的なコメントは控えさせていただきます」と従来通りの対応をしている。

しかし、今年で7年目のスイッチが終盤の局面に入っているなか「次世代機への移行について具体的な施策」を問われた古川社長は、かなり踏み込んだ発言をしている。明らかにスイッチの売上が減速しているもとで、そのテコ入れとなる次世代機は株主にとっても最大の関心事だからだろう。

古川社長は「次世代機への移行に関しては、以前はハードウェアだけが当社がお客様とつながる手段であり、ハードウェアが新しくなるとお客様との関係を再構築していく必要がありました」と前置き。ファミコンからスーパーファミコン、そしてNINTENDO64と、ハードが世代交代するたび顧客がゲームソフトを持ち越せなかったことを指しているのだろう。

その一方「Switchに関しては、ニンテンドーアカウントを介してさまざまなお客様と直接つながることができています(中略)。Nintendo Switchから次世代機への移行においては、ニンテンドーアカウントを活用しながら、お客様にうまく移行していただけるように努めていきたいと考えております」とのことだ。

この言葉は、最小限に解釈すれば「ニンテンドーアカウントで顧客の個人データが引き継げる」に留まる。だが、かつてハードウェアの更新が断ち切った「お客様との関係」にユーザーのソフト資産が含まれるなら、後方互換性を備えるとも受け取れる。そのことを、古川社長も意識していた可能性は高いだろう。

ソニーのPS5やマイクロソフトがXbox Series X|Sが後方互換性を備えているなかで、任天堂が競合他社に追随するのも自然とも思われる。しかし、ニンテンドー3DSはニンテンドーDS、Wii UはWiiという具合に、それぞれ大成功した前機種との互換性があったものの、必ずしも大きな効果があったとは言い難い。

ともあれ任天堂がゲームプラットフォーム企業である限り、すでに社内で次世代ハードを準備していない方が不自然だろう。5月にもシャープが「新型ゲーム機」に液晶ディスプレイを供給するとの報道もあったが、今後は動きが活発化しそうだ。

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