たたむとスマホ、広げるとタブレット
Google「Pixel Fold」レビュー。初の折りたたみスマホ、いきなり高い完成度
Google初の折りたたみスマートフォン「Pixel Fold」が7月下旬に発売される。普及のペースが穏やかな折りたたみスマホだが、Google自らが投入することで、次のフェーズに移るのか注目される。
折りたたみスマホは最新技術をふんだんに投入していることもあり、通常のスマートフォンと比べると、やや高額な価格帯になってしまう。Pixel Foldもその例に漏れず、Googleストアの販売価格は253,000円(税込)であり、競合となるサムスン「Galaxy Z Fold4」の249,700円(税込/ドコモの場合)とほぼ同等だ。
Pixel Foldは6月20日から予約が開始されている。7月16日までの期間に予約購入したユーザーは、次回以降の購入に使える、52,000円分のGoogleストアクレジットがもらえる。このポイントを差し引くと実質約20万円で購入できることになる。
今回、発売に先立って、Pixel Foldの実機を試すことができた。そのファーストインプレッションをお伝えしていこう。
先に断っておくと、記者は折りたたみスマホを普段使っておらず、機会があるたびに軽く試す程度だ。一方で、折りたたみスマホは「実際どうなの?」という疑問を持っている方は少なくないと思う。今回は少し長めに実機を使えそうなので、少しの間メインスマホとして使ってみて、その感想も後日お伝えしたいと思っている。
スマホからタブレットに変身
ここ日本では、折りたたみスマートフォンといえば、サムスンの「Galaxy Zシリーズ」を思い浮かべる方が多いだろう。他にもHUAWEIやOPPOなどの中国勢も展開しているが、いまのところ日本には展開されておらず、国内では選択肢が限られている。そんななかで登場したのが、GoogleのPixel Foldである。
Pixel Foldはいわゆる “横折り” の折りたたみスマホであり、上述したように、直接のライバルはサムスンのGalaxy Z Fold4ということになる。なおサムスンは、 “縦折り” の「Galaxy Z Flip4」も展開している。
横折りタイプのスマホは「開くとタブレット、たたむと縦長スマホ」のような使い方ができる。一方の縦折りでは、「開くと縦長のスマホ、たたむとコンパクトサイズに」といった使い方が可能だ。
Pixel Foldでは、外側に5.8インチのディスプレイ、内側に7.6インチのディスプレイを採用している。どちらも有機ELを採用し、解像度は外側が2092×1080ドット、内側が2208×1840ドットとなる。
ここで注目したいのがアスペクト比だ。本機では、外側ディスプレイが17.4:9、内側が6:5という比率を採用している。この比率には意味があり、同社Pixel Phones プロダクト マネージャーを務めるジョン プラウス氏によると、畳んだ状態では「よくあるスマホのシルエット」にしつつ、開いたときには「ランドスケープ(横広がり)」することで、「タブレットの一番いいところ」が体験できるように設計したという。
実際にPixel 7 Proと並べてみると、本体の上下方向はPixel Foldが短いものの、横幅についてはそこまで大きな違いはない(ベゼルの都合もあり、表示幅はPixel 7 ProよりPixel Foldのほうが狭い)。実際に使ってみても、確かに一般的なスマートフォンのような感覚で利用できる。なお、Galaxy Z Flip4の外側ディスプレイは23:9と、通常よりも縦長になっている。
開いた際のディスプレイはどうかというと、Googleが説明するように横方向が一気に広がり、各種アプリも通常のスマートフォンとは異なる、画面の広さを存分に生かした表示で利用できる。アプリの表示はGoogleが本機に合わせて最適化を行っているようで、たとえばGmailでは左にメール一覧が、右に本文が表示されるなど、通常のスマートフォンより格段に情報量が多い。
ちなみに画面を縦長方面に回転すると、スマートフォンと同じ1カラムのレイアウトになる。またChromeでは、本サイトのようにレスポンシブデザイン(ページ幅によってデバイスに最適化する)を採用しているサイトの場合、そのままだとデスクトップ表示、縦長方面にするとスマホ表示になるサイトが多かった。
細かい点だが、画面の自動回転は「開いているとき」「折りたたんでいるとき」それぞれでオンオフできるようになっていた。実際に使ってみて、コンテンツに合わせて縦横の広がりを切り替えると便利に感じたため、記者的には開いたときだけオンにするのがおすすめだ。またGboardのキーボード設定で、横向き時だけQWERTY配列にできたので、たたむとフリック、開くとQWERTYといった設定も可能となっている。
折りたたみスマホのもう1つの特徴として、折りたたむ角度を調整することで、スタンド代わりになるというものがある。Googleはこれを、「テントモード」や「テーブルトップモード」として紹介しており、このモードに合わせてアプリの動作も変わるようになっている。
まずテントモードだが、こちらは少しだけPixel Foldを開く(最大90度)ことで、外側ディスプレイを立たせて動画などを視聴するという使い方だ。普通のスマートフォンでは別途スタンドを利用する必要があるが、折りたたみ機構をうまく活用することで、スタンドを使わずとも立たせられる。
一方のテーブルトップモードは、開いた状態から少し畳むことで、内側ディスプレイを片側だけ立たせて使用するスタイル。こちらの特徴はアプリの最適化にあり、たとえばYouTubeでは上側に動画、下側に操作系が表示(今後のアップデートで対応予定)されたりする。写真撮影ではスタンド代わりに利用できるなど、便利に使えそうだ。
折りたたみ時、ヒンジに隙間ができない
外観に話を移すと、Pixel Foldは折りたたみの要であるヒンジの部分に、隙間がほとんどないのが特徴的だ。Galaxy Z Fold4ではこの部分に隙間があるが、それがないことで、横からの見ためもスッキリしている。Googleは特にアナウンスしていないが、OPPO Find N2のように、いわゆる水滴型ヒンジを採用しているのだろう。
また折りたたんだ状態の厚みも12.1mmと折りたたみスマホとしては薄く、外側ディスプレイでも片手で操作できる。一方で約283.0gという質量は想像以上にずっしりとしており、長時間の片手操作は少し厳しいかもしれない。なお、横幅が通常のスマホと同程度でしっかりホールドできないためか、細身のGalaxy Z Fold4より20gほど重いだけにもかかわらず、実際に持ってみるとそれ以上に重く感じた。
開いた際のデザインは、既存の折りたたみスマホと比べると、ややベゼルが分厚いが、その分インカメラがベゼルに収まっている。パンチホールが開いているということもないし、そもそもタブレット端末に薄いベゼルのモデルは少ないため、実際に使うと違和感はなく、むしろ “タブレット感” が強調されて好印象に思う。
側面のフレームの素材はポリッシュ仕上げのアルミニウムで、同じ素材を採用するPixel 7 Proと見た目は同じ。一方で背面ガラスは、これまでのPixel 6シリーズやPixel 7シリーズでは光沢のあるものだったが、Pixel Foldではマットなフロストガラスとなっている。
スペックについては、Pixel 7シリーズと同じく、プロセッサーにGoogle Tensor G2を採用している。メモリは12GBで、ストレージは256GBのみラインナップされる。またSIMについてはnanoSIMとeSIMのデュアル対応。ネットワークは5GのSub-6とミリ波に対応しており、Sub-6についてはドコモの主力5Gバンドであるn79もサポートしている。
カメラは広角/超広角/望遠に対応
カメラについては、ここ最近のPixelシリーズで採用されている「カメラバー」が本機にもあり、広角/超広角/5倍望遠の3眼構成となっている。LDAF(レーザー検出オートフォーカス)センサーも備えている。インカメラについては、外側のディスプレイではパンチホールとして、内側はベゼルのやや右上部分に備えている。
広角カメラは48メガピクセルだが、センサーサイズは1/2インチで、Pixel 7 Proの1/1.31インチと比べると、2まわり以上も小さい。実際に撮影したところ、明るい昼間の撮影では全体的な色味や解像度が近く、大きな違いはないようだ。
もちろん周辺部については、Pixel 7 Proのほうが周辺部のフリンジも少なく解像度も高い。光学系などの物理的な特性はPixel 7 Proのほうが上回っているが、大きく拡大して使わないのであれば、違いは気にならないかもしれない。その程度の差である。他の望遠、広角については、周辺部を含めて2機種間で大きな違いはなかった。
またPixel Foldは、Pixel 7 Proで採用された超広角カメラのマクロモードについても非対応。だが、Pixel Foldの広角カメラはPixel 7 Proより寄れるので、使い勝手は良さそうだ。
折りたたみスマホならではの機能として、画面を開いた状態で、外側のディスプレイを見ながら、外側の高画質なカメラで自撮りが行えるというものもある。また先にも触れたが、テーブルトップモードにしてカメラ部分を立てることで、スタンドを用意しなくてもカメラを固定できるのは便利だ。
パーツの配置的に仕方ない部分ではあるが、カメラの位置がディスプレイの左斜め下にあるため、カメラ目線にするのは慣れが必要かもしれない。またインカメラについても、内側のものは右上にあるので、こちらも慣れないと「斜めから撮った自撮り」になってしまいそうだ。また本体が薄く放熱に限界があるためか、動画を見て本体がほんのり温かくなった場合など、比較的簡単に「デバイスの温度が上昇しすぎています。フラッシュをOFFにしました」という警告が出たのも気になった。
アプリの拡充に期待
まだ普及の途上にある折りたたみスマホだが、Androidを開発するGoogleが参入することで、今後の普及拡大の後押しとなるかもしれない。現に、GoogleはPixel Foldに合わせて純正アプリの最適化を行っており、上述したテントモードなど、折りたたみならではの体験が行えるようになっている。
もちろんこういった部分は、たとえサムスンのOne UIなど、各メーカーが最適化を進めてきた部分ではある。だがGoogle自身が乗り出したことで、よりアプリ制作者にとって開発しやすい環境になっていくことが想定できる。すでにNetflixやDisney+など人気アプリの最適化を行ったとGoogleは説明しているが、これからも “折りたたみ” を活かしたアプリが増えていきそうだ。
GoogleとしてはPixel Foldが初の折りたたみスマホだが、これまでのサムスンへの協力や、Pixelスマートフォンのノウハウもあってか、ハードとソフトの両面で、いきなり完成度の高いモデルに仕上がっているように思う。価格的に、気軽に手を出しにくいのは事実だが、発売されたら量販店などでも展示されると思うので、ぜひ一度触ってみてほしい。