すでに戦車や潜水艦で一部操作のパッド利用は一般的

行方不明のタイタニック号ツアー潜水艇、全操作にゲームコントローラーを使用

Image:Ocean Gate

今月18日朝(現地時間)、1912年に沈没した豪華客船タイタニック号の残骸を見る観光ツアー用の潜水艇が大西洋で行方不明となった。この潜水艇は96時間分の空気を備えているが、英国の大富豪ヘイミッシュ・ハーディング氏を含む5人の乗客らの安否が気遣われている次第だ。

この潜水艇「Titan」を操作するデバイスが、PCゲーミングに使うロジクール製ゲームパッド「F710」だったことが注目を集めている。

今回の観光ツアーは、米海底探査会社オーシャン・ゲートが企画・運営したものだ。同社は潜水艇Titanを「最先端の照明とソナーナビゲーションシステムに加え、船体の内外に取り付けられた4Kビデオと撮影機材」として宣伝しており、昨年夏にも米CBS Newsの取材を受けていた。

この映像には、潜水艇のコントローラーを見せられて笑っている記者の姿も映っている。オーシャンゲートのストックトン・ラッシュCEOはF710を手に取り「このゲームコントローラーで全てを動かしているんだ」と語っている。なお、ラッシュ氏も今回、Titanに乗船していた1人だ。

その際、ラッシュ氏はボーイング社やNASAと協力して開発したとも述べていた。つまり非常識なコストダウンを図ったわけではなく、すでに戦車や潜水艦を初めとした本格的な軍事装備が、既製品や少し改造したゲーム用コントローラーで制御されるのが当たり前になった現実が前提にある。

たとえば米海軍は、潜水艦の潜望鏡やそれに代わるフォトニクスマストの操作にゲームパッドを採用している。また米ボーリング・カンパニーは巨大なトンネル掘削機をXbox One用コントローラーで操作する様子を披露していた。

ゲームパッドは安価であり、何より若い世代が使いこなしているため、既製品の流用ソリューションとしては効率がいい。とはいえ、ほとんどは一部の制御だけに使われており、全操作を担うものは例外的ではある。

5人乗りの潜水艇Titanは、1席25万ドル(約3,500万円)するという。もっとも、搭乗する人々らは「この実験的な潜水艇は、いかなる規制機関からも承認や認定を受けておらず、身体的な損傷や精神的な外傷、死亡に至る可能性がある」として権利放棄する書面に署名させられるという。

今のところTitanに何が起こったのか不明だが、おそらくロジクールのゲームパッドが原因となった可能性は低いだろう。水中航行では、船体の破損や燃料不足、酸素ボンベの漏れなど、あらゆる不測の事態が起こりうるからだ。乗客らの無事を祈りつつ、朗報を待ちたいところだ。

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