U1チップは数年更新されていないこともあり
iPhone 15はVision Proとの連係が深まる? UWBチップが強化される可能性
アップルは今月初め、空間コンピュータこと「Apple Vision Pro」をようやく正式発表し、米国での発売時期を「2024年初め」と予告していた。これに伴い、同社が今後iPhoneのハードウェアを強化してVision Proエコシステムとの統合を進めると、有名アナリストがレポートを公表している。
アップルのサプライチェーン情報に詳しいMing-Chi Kuo氏は、Vision Proの競争力あるエコシステムを構築するため、「ハードウェア仕様を積極的にアップグレードしていく」と述べている。ここでいうハードウェアは、もっぱら主力製品のiPhoneである。
Kuo氏は、エコシステムはVision Proの重要な成功要因の1つであり、そこには他のアップル製ハードウェアとの統合も含まれるという。要はApple WatchやAirPods等がiPhoneとの密な連係により大ヒットしたように、Vision ProもiPhoneのエコシステムに入れたい、ということだろう。
そのカギとなる主なハードウェアは、Wi-FiとUWB(超広帯域無線)とのこと。Wi-Fiは当然として、最近UWBチップもHomePodやApple Watchにも搭載され、存在感を増している。
アップルが採る最初のステップは、次期「iPhone 15」シリーズ内蔵のUWBチップをアップグレードすることだという。製造プロセスが16nmから高度な(微細化した)7nmに移行し、近距離インタラクション(デバイス相互のやり取り)の性能向上や省電力化が可能になるとのことだ。
現在のApple U1チップはiPhone 11に初搭載され、それ以降の後継モデルにも採用され続けている。忘れ物トラッカーAirTagやAirPods Pro(第2世代)のケースにも内蔵されているが、これまで4年近く更新されていない。
このU1チップにより「探す」機能やハンドオフ(楽曲再生などの引き継ぎ)、AirDropなど様々なエコシステム機能の精度が向上している。要となるチップが改善されることで、たとえばiPhoneで鑑賞していた音楽や映画の続きをすぐVision Proで観られるのかもしれない。
さらに翌年の「iPhone 16」シリーズは、Wi-Fi 7規格に対応するという。それにより同じローカルネットワーク上で動くアップル製品の統合を促進し、良いエコシステム体験を提供できるとのことだ。
Wi-Fi 7は次世代Wi-Fi規格であり、ようやく日本でも利用可能となったWi-Fi 6Eの次に来るものだ。なおiPhone 14シリーズでもWi-Fi 6止まりであり、最新のMacおよびiPad ProのみがWi-Fi 6Eに対応している。Wi-Fi 7は理論値が最大46Gbps、実効最大速度として30Gbpsを目指しており、Wi-Fi 6およびWi-Fi 6Eの数倍にも上るという。
一般的にWi-Fi 7を推進する企業は、VRやARにもたらすメリットを強調している。たとえばネットギアの説明では「完全にインタラクティブなコンテンツで新しい仮想世界を探索するための可能性を解き放ちます。超高速/超低遅延により、ユーザーはリアルな反応と新感覚のテクノロジーで、想像を超える体験ができるようになります」という具合だ。
Vision Proは単体でも超高性能には違いないが、ヘッドセットというフォームファクター的に、日常生活との接点が薄くなりやすい可能性がある。すでにMacの外部ディスプレイになることは発表済みだが、たとえばiPhoneやiPadで使い慣れたアプリがハンドオフで引き継がれ、未知の体験あるいはユーザビリティが向上すれば、いずれApple Watchのように一般ユーザーにも浸透していくのかもしれない。
- Source: Ming-Chi Kuo(Twitter)
- via: 9to5Mac