EVは暖房の熱をエンジンから取れません

「寒冷地でも性能低下しないEV用バッテリー」開発、中国ベンチャーが主張

Image:Frame Stock Footage/Shutterstock.com

中国のバッテリー技術スタートアップ、Greater Bay Technologyが、寒い冬の気候のなかでも性能を発揮できる電気自動車用バッテリーを開発したと主張している。この会社は「Phoenix」と称する独自のバッテリーセルに超伝導材料と熱管理システムを導入し、5分もあればバッテリーを-20°Cから25°Cまで加温することが可能だと述べている。これにより、寒冷地でもバッテリーを常に最適なコンディションに保ち、航続距離や充電時間でも本来の性能を発揮できるという。

気温が低くなる冬、特に寒さが厳しい北国は、EVがその性能を発揮しにくい環境だ。ボルボ傘下のポールスターや、GM、その他いくつかの自動車メーカーは、バッテリーの温度を保つためにヒートポンプシステムを採用している。またドイツの自動車部品サプライヤーZFは、エンジンの熱を暖房に再利用できないEVにおいて、エアコンによる電力消費を抑えるため、シートベルトにヒーターを編み込んだ「ZFヒートベルト」を開発している。

Phoenixバッテリーは、そのような追加のシステムや特殊な部品を不要としつつ、寒冷環境でもEVの性能を最大限に引き出そうとするものだ。このバッテリーについてGreater Bayは(バッテリー容量やモーター出力容量にもよるはずだが)航続距離1000kmを実現すると述べ、そして2024年には、中国のEVブランドAIONのSUVに搭載されて出荷される予定だとしている。

ただし、本当にGreater Bayの言うとおりの性能をこのバッテリーが発揮できるのか、その評価は実物が出てくるまで待つ方が良いかもしれない。特に、中国自動車技術研究センター(CATARC)によって開発された中国独自の燃費および電費基準(CLTC)で測定される電費データは、国際基準のWTLCや、米国が採用するEPAなどに比べて甘い数字が出てくるとされており、額面どおり受け取ってしまうと、あとで肩透かしを食らう可能性も否定できない。まずは独立した試験機関による評価を待ちたいところだ。

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