フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ噴火、早口で3回言ってみよう
2021年のフンガ・トンガ海底火山噴火は「プラズマバブル」で衛星通信を乱すほど強力だった
2021年1月、火山活動が続いていた、南太平洋のトンガ王国近くにあるフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ海底火山が激しい爆発を伴う噴火を起こした。その噴煙は高度57kmにまで到達し、爆音は500km離れたニュージーランドやオーストラリアでも聞こえたという。
爆発は過去100年以上の自然現象としてはもっとも強力な例であり、米国が保有する最大の核爆弾にも匹敵すると言われている。そして新たな研究によると、この噴火によって発生した気圧変動(気圧波)は、高度80~1000kmにおよぶ地球の最も外側の大気層である電離層をかき乱すほど強力だったと報告されている。
名古屋大学宇宙地球環境研究所の新堀淳樹特任助教を筆頭とする研究チームは、火山活動が電離層のF領域(高度約150~800km/電離圏の中で電子が最も多く含まれる)を破壊する可能性を長年研究してきた。地球の磁力線が地面に対して水平になる「磁気赤道」の電離層では、火山の噴火などの地表付近で起こる現象が、F領域下部の電子密度を局所的に乱して上昇する「プラズマバブル」を発生させると考えていたためだ。
研究者のひとりは、Space.comに対し「このようなプラズマバブルは電離層ではほとんど観測されたことがない」と述べている。そして今回の研究では赤道プラズマバブルを検出すべく、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」と気象衛星「ひまわり8号」、地上の観測所などを駆使して電離層の運動を追跡した。
その結果、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ海底火山の噴火は世界中に気圧波を引きおこし、アジア圏では少なくとも高度2000kmの宇宙空間にまで届く赤道プラズマバブルが検出されたとのことだ。これは、標準的なプラズマバブルのモデルで予測されるよりも、はるか高高度に到達したものだという。
また、このプラズマバブルが到達する数時間前から上空の電子密度が急激に上昇、噴火で発生した気圧波が電離層のイオンと相互作用し、エネルギーが地球の磁力線に沿って急速に移動して発生した可能性があるとのことだ。
この発見は、今後の火山噴火や何らかの現象で発生するプラズマバブルの予測に役立つと考えられる。プラズマバブルによって電離層が乱れ、付近の通信電波の位相や振幅を乱したり、GPSによる測位にも大きな誤差をもたらしたりすることは避けられない。だが、付近の飛行機や船舶へ事前に注意喚起できると新堀氏は述べている。
Space.comは、今後の研究においては地上の火山噴火の影響にとどまらず、別の惑星の火山活動も調べられる可能性があると伝えている。たとえば地球に最も近い金星の大気におけるプラズマ観測を行うことで、厚い雲に覆われて見えない地上の火山の存在を確認し、調べることができるかもしれない。
- Source: NICT Scientific Reports