精米時のもみ殻に含まれるガラスを利用

お米から量子ドットLEDを作ることに広島大が成功。テレビに搭載される日も来る?

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Image: ACS Sustainable Chemistry & Engineering

日本人の主食と言えばお米。そのお米のもみ殻から、量子ドットLEDを製造することに成功したと、今年1月に広島大が研究成果を発表した。米アメリカ化学会(American Chemical Society)の学術誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に論文が掲載されている。

あまり知られていないことだろうが、お米のもみ殻の成分のうち、20%はガラスである。広島大によると、現在、もみ殻に含まれるガラスを使ったリチウムイオン電池の研究が、欧米などで盛んに行われているという。だが、もみ殻中のガラスを使ってLEDを作る研究はこれまでになかったため、今回広島大が挑戦したところ、製造に成功した。

同大の研究グループは、もみ殻に含まれるガラスから、波長680nmのオレンジ色に発光する、有機溶媒に溶けるナノシリコン(シリコン量子ドット)を合成した。発光効率は21%だった。さらに、その量子ドットを用いたシリコン量子ドットLEDの開発にも成功したという。

もみ殻から作ったシリコン量子ドットというだけでもインパクトがあるが、そもそも植物やバイオ系の天然素材を使って製造されたLEDがこれまで存在しなかったとのことで、同大は「世界初の成果、世界初の概念」とアピールしている。

近年、量子ドットを搭載したディスプレイが増えており、大型テレビやタブレットなどに搭載されている。量子ドットは英語では「Quantum Dots」であり、その頭文字を取って「QD-LED」などと呼ばれている。

ただし現在の量子ドットは、カドミウムや鉛、その他の重金属などの有毒物質を含むことが多く、環境負荷も低くない。それに対して、今回広島大が作ったシリコンの量子ドットは重金属を使わないため、毒性がなく環境にも優しいという。またLEDの製造も、このシリコン量子ドットの溶液と導電性の高分子溶液を基板に塗布することで行え、シンプルに行えるという。

同大によると、精米によって年間数十億キログラムのもみ殻が発生しているとのこと。グリーンな材料を使ったLEDの製造は、持続可能な社会の実現にも寄与しそうだ。

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