iPhone同等のパワーで消費電力1/10というハードル
アップルのARメガネ、早くとも4年後か。プロセッサーの省電力化がネック
アップルが2つのAR関連製品を開発中であることは公然の秘密だが、そのうち本命と見られているのがAR/VRヘッドセット「Reality Pro(仮)」よりも、軽くて日常的にかけられるARメガネ、通称「アップルグラス(Apple Glasses)」だろう。
しかしその開発は難航しており、発売まで少なくとも4年はかかると、同社の未発表製品に詳しいBloombergのMark Gurman記者が報じている。
最新記事でGurman氏は、Reality Proが妥協に妥協を重ねたことを詳述しつつ、ARメガネも同じような問題に陥っていると説明している。もともとアップルグラスこそが、ティム・クックCEOと全デザイン最高責任者ジョニー・アイヴ氏が作りたかった製品であることは、複数の情報源も伝えていた。
だが開発において難所となるのが、オーバーヒートせずに十分な処理能力を持つプロセッサを用意することだ。開発初期にエンジニアらが検討したところ、iPhoneの10分の1程度の消費電力で、iPhoneと同等の性能をフルに発揮できる必要があると計算したそうだ。
ARハードウェア開発の陣頭指揮を執るマイク・ロックウェル氏は2019年末、100人以上の従業員とのミーティングにて、アップルグラスはヘッドセット発表からわずか1年後に発売できるだろうと述べたという。
しかしGurman氏の情報筋によれば、本製品の開発チームは限られたリソースしか得られていないそうだ。本プロジェクトに関わる匿名の従業員は、チーム内ではクックCEOを喜ばせるためだけに「絶望的な」デバイスの開発を続けているとのジョークが飛び交っていると語る。
それでもGurman氏は、アップルグラスが発表されるまでに少なくとも4年はかかると報じている。あまりに楽観的すぎる印象もあるが、ヒントの1つが「プロセッサーが最大のネック」とされていることだろう。
Appleシリコン(独自開発チップ)の製造を一手に手がける台湾TSMCの技術は、着実に進化を遂げている。今年秋のiPhone 15 Pro向け「A17 Bionic」チップや、年末~2024年初頭のMac向け「M3」チップに使われる3nmプロセス技術は、iPhone 14 Pro用のA16製造に使われた4nm技術よりも電力効率が35%改善すると謳われている。さらに4年後であれば、いっそう省電力性能の向上も望めるだろう。
またサイズが小さく量産もしやすい「メタレンズ」により、ARメガネを薄くする目処も立ちつつある。それにヘッドセット開発で培われた技術も投入され、他社製品とは一線を画するアップルグラスが登場すると期待したいところだ。