2017年の評価額は57億ドル

米ウェブメディア「Vice」運営会社が破産申請。投資会社に売却へ

Image:Vice Media

「Vice」や「Motherboard」といったウェブメディアなどを運営するVice Media Groupが、米国で破産を申請した。米連邦破産法第11条の適用により、債権者に対する義務を延期し、債務の再編成や事業の一部を売却のための猶予を確保する。なお、売却手続きには2〜3ヵ月ほどかかると予想されている。

Vice社の共同最高経営責任者であるBruce Dixon氏とHozefa Lokhandwala氏は「裁判所の監督下で行われる売却手続きの加速は、会社を強化し、Viceを長期的な成長へと導くものだ」と述べた。

銀行はViceに対して当面の運転資金である2000万ドルの融資を承認している。これによって他の企業は、2017年には評価額57億ドルを誇っていたVice Media Groupを「より高額もしくはより良い価格で」入札できる。もしも買い手が現れなかったり、取引が成立しない場合は、同社を支援してきたFortress Investment Group、Monroe Capital、Soros Fund Managementなどの投資会社が、これを2億2500万ドルで買収する可能性があると、報道各社は伝えている。

Vice Media Groupは若者向けのメディア企業として、ウェブメディアのほか出版、イベント、音楽さらにはテレビや映画にまで幅広く活動を展開。世界30か国以上で事業を展開し、従来のメディアの垣根を取り払おうとする企業のはしりとしてその名を轟かせた。

2012年にはかの “メディア王” ルパート・マードック氏がVice Mediaを訪れ「既存のメディアを読まない、見ないミレニアル世代に興味を持ってもらうための、ワイルドで面白い取り組みだ」と評したという。

最近でも、Viceは500万人を超えるフォロワーを抱えながら、SNSを通じた女性蔑視発言の数々などで物議を醸すインフルエンサー、アンドリュー・テイトへの密着ドキュメンタリーを制作したり、ハリウッドスターのショーン・ペンを起用して、ウクライナ大統領のヴォロディミル・ゼレンスキー氏を追ったドキュメンタリー映画作品の制作といった、尖ったコンテンツの発信を続けている。

Viceはその活動を強化し始めた頃、FacebookやInstagramといったSNSを活用して何百万もの若者を惹きつけ、そこに収益減を見いだすことが期待されていた。それは確かに、かつての評価額を見てわかるとおりの成功につながったわけだが、近年は収益の成長が鈍化、広告による収入も減少し利益を生み出すことにも苦労し始めていた。企業再編による株式公開の試みも失敗に終わっている。

英BBCは、「Viceや類似のウェブサイトすべての問題は、無料のオンラインジャーナリズムのビジネスモデルがうまくいかなかったことだ」「ソフトウェアビジネスが先行投資によるユーザー獲得で収益を押し上げられるのに対し、コンテンツはそのようには行かなかった」というアナリストの見解を伝えている。

Viceと並び注目されたオンラインメディア企業のBuzzFeedも、現在は業界全体の広告収入の低迷を受け、財政的に厳しい状況に置かれており、最近、ニュース部門の閉鎖と従業員の15%削減を発表している。

関連キーワード: