AI作曲が大量に流れ込んでいる背景があり

Spotify、AIで生成された数万の楽曲を削除。再生回数不正操作の疑いか

Image:Jirsak/Shutterstock.com

ここ最近は、AIで制作した楽曲がストリーミング各社のサービスに大量に登録されるようになっており、何かと物議を醸しがちだ。

そして新たにSpotifyが、AI作曲プラットフォームBoomyで生成された数万曲を削除したことが明らかとなった。これはBoomyがアップロードした全楽曲のうち、約7%だという。

今回の一件は、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)の調査がきっかけである。最初に報じた英Finaicial Timesによると、UMGがSpotifyをはじめとする大手サービスに対して、Boomyの楽曲について疑わしいストリーミング活動を検出したと伝えたという。

すなわちボットを使ってリスナーの数を増やし、アップロードした人に不正な収益を与えている疑いが生じたそうだ。Spotifyはアーティストや権利者に、再生回数に基づきロイヤリティを支払っている。

Spotifyは米Business Insiderに対してこれが事実だと認め、「ストリーミングの不正操作は、長年にわたる業界全体の問題であり、Spotifyは自社サービス全体にわたって根絶するために取り組んでいる」と語っている。さらに、不正操作を特定または警告された場合は、楽曲の削除やロイヤリティの保留を含む対応を取ることで「誠実で勤勉なアーティストのロイヤリティ支払いを保護できる」とも付け加えている。

AIで制作した楽曲をめぐるトラブルは、今年4月にも注目を集めたばかりだ。やはり渦中にあったのはUMGであり、同社が配給している人気ラッパー・ドレイクの声をAIに学習させて制作したディープフェイク曲を、ストリーミング各社のサービスから削除するよう要請していた

もっとも、通常DMCAテイクダウンの根拠となる著作権侵害があったかどうかは、はっきりしていない。UMG側は「アーティストの音楽を使って生成系AIを強化すること」が、「契約違反と著作権法違反」に当たると主張していたが、問題の曲はドレイクらが制作に一切関わっていないからだ。

そしてSpotifyがBoomyの楽曲を削除したことは、あくまでストリーミングの不正操作が理由とされている。前回とは根拠は異なるのである。

とはいえ、その根底には音楽ストリーミングに流れ込んできた大量のAI生成曲に対する危機感があるようだ。Boomyは2021年にオープンしたばかりだが、すでに約1450万曲、つまり全世界で録音された楽曲の14%を生み出したと謳っている

さらにBoomyは「音楽を作ったことがない人でも、数秒でオリジナル曲を作ることができる。ストリーミングプラットフォームに楽曲を投稿し、誰かが聞けば報酬を得られる」とストリーミングでの収益化を推奨さえしている。再生回数の不正操作であれ、作風や歌声を学習されるのであれ、アーティストや権利者が強く警戒するのも当然だろう。

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