アカウント共有対策も同時期に米国で開始
Netflix、創業から続けてきた宅配DVDレンタル事業を9月で終了へ
Netflixは、9月29日をもって、1998年の創業以来これまで続けてきたDVD(およびBD)の宅配レンタル事業を終了すると発表した。これまでにレンタルしてきたタイトル数は延べ52億本にのぼり、4000万人以上にディスクを郵送してきたとのこと。
Netflixにとっての大きな転機は、現在の主力事業であるオンデマンドの動画ストリーミングを2007年に開始したことだった。それから2009年までのわずか2年間でストリーミングはNetflixの主力事業に成長した。だが、Netflixは2016年にディスクの郵送レンタル事業をDVD.comブランドに移して続けてきた。
ディスクの宅配レンタル事業には根強い利用者層があり、2020年の時点でも、米国のユーザー数は200万人を数えていた。宅配レンタルのメリットは、ストリーミングよりも多いタイトルを取りそろえていることや、ネット環境に左右されずに安定した画質で視聴が可能なところだ。米国では一部で、いまも通信速度が低速だったり、月間の使用データ量に制限がある地域が存在している。
また、ディスクなら、サービスの垣根にとらわれずに見たい映画を見たいときに借りられるという利点もある。ストリーミングでは、時期によって視聴できるタイトルが変わることが多く、ふと、特定の作品を視聴したいと思ったときにそれがラインナップにないこともよくある。特に新型コロナウィルスのパンデミックで自宅にいる時間が増えた時期には、ストリーミングのラインナップが貧弱だと感じた人たちが宅配レンタルサービスに再登録する動きもあった。
ただ、ほぼ全世界にストリーミング事業を展開するまでに成長したNetflixにとって、宅配レンタル事業の収益は相対的に小さくなっていることも事実だ。2022年には、パンデミック時に増えたストリーミングサービスの加入者が減少に転じたが、宅配レンタルのユーザーはもう何年もコンスタントに減少しており、売上高の減少も続いている。今回の廃止の決定でも、それほど大きな効果はないかもしれないが、Netflix全体としてのコスト削減に一部寄与するだろう。
なお、Netflixは現在、1つのアカウントを同一世帯以外と共有して使う視聴者への対策として有料でゲストメンバーを追加できる有料アカウント共有プランを、中南米を皮切りに、今年2月にはカナダ・ニュージーランド・ポルトガル・スペインにも拡大して導入してきた。そして宅配レンタル事業を終了する2023第2四半期には、このアカウント共有対策を、新たに米国を含め幅広く展開する計画だと株主向け資料で説明している。