日本では人気が出そうな名前

Google、検索エンジンをAIで強化する「Magi」プロジェクトを5月に発表か

Image:JRdes/Shutterstock.com

Google検索に生成系AI機能が追加されることは、最近のAIチャットボット「ChatGPT」やその技術を搭載したマイクロソフトのBingによる大攻勢を振り返れば、当然の展開と言っていい。同社内ではその準備が2段階に分けて進められており、そのうち既存の検索機能を強化するプロジェクト「Magi」がまもなく公開されると報じられている。

The New York Times(以下「NYT」)が見たGoogle内部文書によると、Magiは既存の検索エンジンを「AI機能でアップグレードする」とのことだ。これは現在のサービスよりも「はるかにパーソナライズされた体験」を提供し、ユーザーのニーズを先取りするものだという。

その新機能の1つは、ソフトウェアのコーディングに関する質問に答えるほか、ユーザーのリクエストに基づいてコードを書かせることも可能だという。さらに検索後にフォローアップの質問を受け付け、会話も成立する見通しとのことだ。

ただし、生成された結果の下には広告が表示されるそうだ。今なおGoogleにとって主な収入源が検索広告であることから、当然の方針と言えるだろう。先日発表したチャットボット「Bard」には広告の掲載がなく、ユーザーと広告の関連性が低くなりかねないことから、それを補う措置のようだ。

現在Google社内ではデザイナー、エンジニア、重役を含めた160人以上がフルタイムで働き、Magiの調整とテストに取り組んでいるという。そして来月(おそらく5月10日のGoogle I/O)に一般公開し、秋にはさらに機能を追加する予定だと報じられている。

ただし、当初は米国のみで最大100万人のユーザーに限定した後、年末までに3000万人まで順次拡大する見通しだそうだ。Magiといえば『新世紀エヴァンゲリオン』に出てくる超AIを彷彿させるだけに、日本での提供が遅れるのは残念なところだ。

このMagiの先には、AIを搭載した「全く新しい検索エンジン」の構築が予定されているという。本システムはユーザーが使い始めたときに検索している内容から、ユーザーが何を知りたいかを学習する。そして買うべきものや調べるべき情報など、(入力するまでもなく)あらかじめ選択された選択肢をリストアップしてくれるそうだ。

また、より会話に近い形で、親切な人とチャットしているような印象を目指すとのことだ。この第2段階にある検索エンジンは未だ初期段階にあり、いつ公開されるかは明確な予定が立っていないという。

ほか興味深いのは、Googleが3月に「サムスンが自社製品のデフォルト検索エンジンとして、GoogleからマイクロソフトのBingに乗り換えることを検討している」と知ったと報じられていることだ。おそらく、Androidスマートフォンやタブレットを指しているのだろう。

このニュースに対するGoogle社内の反応は「パニック」だったという。サムスンとの契約には、推定30億ドルの年間収益がかかっているからだ。サムスンが長年にわたる契約の見直しを検討している理由は明らかではないが、少なくともGoogle側はBingとAIの連携が原因だと見なしているようだ。

Googleがスマートフォン大手のデバイスにつき、標準検索エンジンの座を守るために巨額を支払っている(いわゆるデフォルト検索エンジン代金)のは公然の秘密だ。アップルにも支払っていると噂されているが、NYTによれば今年は200億ドルにも上るという。AIチャットボットが、いよいよGoogleの検索ビジネスモデルを脅かし始めたのかもしれない。

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