ポンプ機能の低下を正確に検出

Apple Watchの心電図をAIで解析、気づきにくい心機能不全も検出できたとの研究成果が発表

Image: Apple

Apple Watchは心拍数など健康センサーを内蔵しており、いち早く病気の兆候を知るためにも活用されている。その新たな分野の1つとして、心電図アプリのデータをAIで解析することにより、心臓のポンプ機能低下が検出できるとの研究結果が報告された。

心臓のポンプ機能低下、つまり左心室機能不全は、世界中で2-3%、60歳以上では最大で9%の人が罹患している病気だ。Apple Watchが検出できる心房細動と同じく、病気を抱えていたとしても症状が出づらいことがままある。心臓の拍動の乱れや息切れなどの症状を伴うこともあるが、ポンプ機能の低下だとは気づかれにくいようだ。

今回の研究は、不整脈に関する非営利団体、Heart Rhythm Societyのカンファレンスにて、米国の総合病院メイヨー・クリニックが発表したものだ。同病院は、Apple Watchに記録された心電図のデータをAIで分析する研究に取り組んでいるという。約420人の患者を対象にテストしたところ、心臓のポンプ機能が弱まっていると正確に検出したと判明したとのことだ。

それと合わせて、最近心電図をとった2,400人以上のデータも活用された。同じAIによって心電図データを解析すると、心臓のポンプ機能低下を患っている16人の患者のうち13人が正しく判定されたそうだ。

メイヨー・クリニックの循環器内科部長ポール・フリードマン氏は、通常、心エコー検査やCTスキャン、MRIなどを使ってようやく特定できる症状が、市販のスマートウォッチ内蔵の心電図で検出できることは「まったく驚くべきこと」だと述べている。

病院で使われる心電図測定装置は、人の胸や腕、脚に12本の電極リードを繋ぐものだ。それに対してApple Watchのような電極が1つのタイプは「シングルリード心電計」と呼ばれる。今回のAIは、12本リード用のアルゴリズムをシングルリード向けに修正したとのことだ。

また今回の研究に続き、Apple Watchのシングルリード心電図機能のメリットを実証するため、より多様な集団で、追加テストを行う予定だという。上述のフリードマン氏は「これこそ、医療の変革の姿です。家にいながら重大な病気を安価に診断できるのです」との趣旨を語っている。

アップルのティム・クックCEOは、今後Apple Watchを予防医療に活用することを示唆しつつ(実際アップルも医療機関と数々の共同研究をしている)、病気の早期発見が医療費の大幅削減に繋がると発言していたことがある。そうした未来がやって来ると期待したいところだ。

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