新著『Build』の刊行記念インタビューにて

ジョブズが「WindowsユーザーにiPodを与えない」を撤回した逸話、iPodの父が語る

Image: LeWeb14

「iPodの父」として知られるトニー・ファデル氏が、シリコンバレーで働いた30年間の裏話を語った新著『Build』を刊行した。その出版記念としてCNBC記者、ジョン・フォート氏のインタビューに応じ、初期のiPodとiPhoneの開発や、スティーブ・ジョブズ氏による物議を醸した決定について詳しく語っている。

ファデル氏は2001年にiPod開発の責任者としてアップルに入社し、2006年 – 2008年にiPod上級副社長を務めた人物である。もともとiPodの原点は、ファデル氏がHDD内蔵の携帯音楽プレイヤーを開発する会社Fuseを創業し、それがアップルに買収されたことである。またiPhoneの開発もiPodが基礎となっており、要は「ファデル氏なくして今日のアップルもなかった」と言える位置づけだ。

「WindowsユーザーにiPodを与えない」方針について

ファデル氏はiPod以前にも複数のMP3プレーヤーが存在し、かなりの人気を博していたと振り返っている。しかし、どれも「ただMP3を再生したい」という人にとって、直感的に操作できるものではなかったという。そうした体験を大衆に提供することが、アップルの狙いだったとのことだ。

そうした狙いのために、iPodは使いやすく、バッテリーの持ちもよく、データ同期が速く、(HDD搭載により)1000曲を持ち運べるものでなければならなかった。

これこそが、USBではなくFireWireを採用した理由の1つだったという。当初のUSB規格は最大12Mbpsと超低速だったのに対し、すでにFireWireは100Mbpsを超える転送が可能だったからだ。しかし、ファデル氏によれば「もう1つの理由」があった。

それはFireWireがWindows PCでは使えなかったから。「iPodに曲を転送するためには、Macが必要だ」これがスティーブ・ジョブズの決断だったそうだ。ファデル氏は当初から「Windowsで使えるようにしなければならない」と言ったものの、ジョブズ氏は「そんなことは絶対にさせない(Over my dead body)と突っぱねたという。

ジョブズは、iPodをきっかけにWindowsユーザーをMacに乗り換えさせられると考えていた。しかし、実際にそんなユーザーは決して多くはなかった。またMacを持っていない人にとっては(Macを買い足す必要もあり)かなり高くつくため、iPodの販売にも影響が出ることになる。

それでもジョブズはWindows PCとの互換性を持たせることに断固反対していたが、ファデルとiPodチームは、ジョブズの友人でもあるジャーナリストのウォルト・モスバーグ氏と協力して説得したとのこと。そして第3世代以降のiPodは大成功したというわけだ。

iPhoneのサードパーティアプリ

初代iPhoneが発表された当時、ジョブズ氏がサードパーティ製アプリに反対していたことは広く知られている。それは元アップル幹部のスコット・フォーストール氏も裁判の宣誓証言で語っているだけに事実だろう。

しかしiPhoneが発売されると、やがて開発者やソフトウェア企業は自分たちのアプリを動かせることを望むようになった。そこでアップルはSafari上で動くウェブアプリの開発を促すという「甘い解決策」を思いついたそうだ。ファデル氏は、この案が当時GoogleのCEOでアップルの取締役でもあった、エリック・シュミット氏から強い支持を受けていたことを明かしている。

しかし、ウェブアプリはネイティブアプリ(ハードウェアの性能を引き出したアプリ)ほど優れたものではない。さらにiPhoneは期待したほど売れなかったので、ジョブズはApp Storeを立ち上げ、iPhoneアプリのエコシステムに「人々を囲い込む」好機と判断したとのことだ。

ジョブズ氏の完璧主義やデザインへのこだわりは、iPodやiPhoneを世界に普及させる上で大きな力となった。が、それは同時に他社製品や多くのユーザーを巻き込むことを拒否し、ひいてはニッチ市場に留まる落とし穴を掘りかねない。それを渋々であれ認めたジョブズ氏の柔軟さや、そのために多大な努力を払った人々の頑張りを伝える証言といえそうだ。

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