アップルとサムスンは切っても切れない縁
サムスン、「高度な有機ELパネル」製造に30億ドル以上投資。iPadやMacBook向けか
アップルは今後、iPad ProやMacBookのディスプレイを有機ELに移行していくことが確実視されている。その製造パートナーの1つと見られているのが、フラッグシップiPhone向け有機ELパネルを供給してきたサムスンである。
そのサムスン(正確にはサムスン電子傘下のサムスンディスプレイ)が、「タブレットやコンピューター」に使われる高度な有機ELディスプレイパネルを製造するため、2026年までに30億ドル以上の投資を計画していると報じられている。
すでにサムスンは、iPhone向けに有機ELパネルを大量生産している。しかし、iPad ProやMacBook向けの大型ディスプレイを準備するに伴い、新たな生産施設が必要になったと思われる。たいていのディスプレイ製造施設がそうであるように「小は大を兼ねられない」からだ。
これまでのフラグシップiPhoneに採用されたフレキシブル有機ELパネルは、筐体の内側に曲げて収納できるため、全画面デザインに近づけやすい強みがある。だが一方で、10インチ以上に大型化すると加工の熱で画面が反り返る恐れがあり、精度や見た目が重視されるアップル製品としては許容しがたい。
そこで、有機EL版iPad Proの第1世代機にはリジッド(折り曲げられない)とフレキシブル技術を組み合わせたハイブリッド型パネルが採用されると言われている。さらに第2世代も準備中と噂されており、サムスンとしても巨額の投資に見合う利益が上がると判断したのだろう。
今回注目すべきは、この件をサムスンではなく韓国政府が発表したことだ。
サムスンは以前、チップ製造において20年間で約2300億ドルに上る大規模な長期開発計画を発表しており、韓国政府が追加減税という形で支援することも確認されていた。今回も政府が発表したということは、同様の支援が与えられ、ひいては韓国の国策と示唆しているとも解釈できる。
次期iPad用の有機ELパネルは(おそらくサムスンと共同で)4つのプロトタイプが開発中だと噂されている。それだけサムスンにとっても優先度が高いのだろう。
アップルはサムスンへの有機EL依存を脱却するため、新技術のマイクロLEDに巨額の投資をしているとの報道もあった。が、マイクロLEDを大型化するのは有機ELパネル以上に困難が予想されるため、しばらく両社の「最も不幸な結婚」とも表現される関係が続きそうではある。