買収を拒否され資金援助を停止

当初は非営利だった「OpenAI」、利益追求に変わった原因はマスク氏?

Image:DIA TV/Shutterstock.com

今や時代の寵児となったChatGPTで知られるOpenAIは、もともとは非営利のAI研究団体としてスタートした。それが有料プラン「ChatGPT Plus」を提供するなど利益追求に転換したのは、テスラやTwitterのCEOであるイーロン・マスク氏が遠因だと報じられている。

マスク氏はOpenAIの共同創設者の1人であり、ハイテク業界の大物らとともに巨額の資金を投じていた。だが、ニュースメディアSemaforによると、2018年にマスク氏がOpenAIの買収を提案したところ、当時の最高技術責任者だったグレッグ・ブロックマン氏やサム・アルトマンCEOらに拒否されたという。その後、マスク氏はOpenAIの取締役を退任している。

当時、マスク氏の退任はOpenAIとの利益相反のためと公表されていた。実際にテスラはOpenAIの最高の頭脳の1人だったアンドレイ・カルパシー氏を引き抜き、自律走行プログラムの責任者としており、事実の一端を示してはいた。だが、ほとんどの社員がその話を完全に信じていたわけではないという。マスク氏がOpenAIのボスになれなかったからという、より個人的な理由によるというわけだ。

OpenAIの発表では、マスク氏は引き続き資金を提供するとされていた。だが、事情通によるとその事実はなかったという。マスク氏は数年にわたって10億ドルを寄付すると約束していたが(すでに1億ドルを寄付していた)退任後は支払いがストップしてしまったとのことだ。

これにより、OpenAIの予算に大穴が開いた。同社のGPT-4やGoogleのBardなどは、深層学習の手法である「Transformer」を用いているが、訓練するためには無限にデータを与える必要があり、莫大なコストがかかる。2019年に同社が営利目的の子会社OpenAI LPを設立し、実質的に営利モデルに転換したのは、マスク氏からの資金が断たれたから、ということだ。

その後OpenAIは、マイクロソフトと10億ドルのパートナーシップを締結し、今年初めには100億ドルの追加を検討しているとも報じられていた。また同社は自社モデルやGPT-4の訓練データを非公開としているが、これは「競争環境」と「安全への影響」の両方からだと述べている。資金難による存立の危機が、よほど骨身にしみたのかもしれない。

かたやマスク氏は先月、ChatGPTに匹敵するAIの開発を目指して新たなAI研究所の設立を計画していると報じられていた。また本人も、OpenAIが「もともとGoogleに対抗するためのオープンソースの非営利企業として設立された」はずが、「マイクロソフトに事実上支配されたクローズドソースの利益追求企業」になってしまったと不満を表明している。

それ以前にも、OpenAIが訓練のためにTwitterにアクセスすることに制限を課していた。マスク氏は「OpenAI はオープンソースおよび非営利団体として始まったが、まだ実現していない」と繰り返し述べているが、それが自らに原因があるとすれば皮肉と言うほかはない。

関連キーワード: