歌詞に関連する人物が憑依するかのよう

ディープフェイク進化形。ケンドリック・ラマー、新MVで顔をカニエ、コービーらに七変化

Image:Kendrick Lamar(YouTube)

マイケル・ジャクソンが1991年にリリースした『ブラック・オア・ホワイト』は、そのミュージックビデオ(MV)のなかで当時最新技術だった「モーフィング」と呼ばれる手法が用いられ、様々な人が人種性別関係なくシームレスに変化して行く映像表現が大きな話題となった。

あれから30年が過ぎ、現代のモーフィング技術といえば、ディープラーニングと呼ばれるAI強化手法を駆使して、映像に映る人物の顔をそっくり別人にすげ替える「ディープフェイク」と言えるだろう。

そして、いま現代のヒップホップシーンで頂点に立つラッパーのひとり、ケンドリック・ラマーは、新曲「The Heart Part 5」のMVにこのディープフェイク技術を持ち込み、自らの顔を歌詞内容に合わせた様々な著名人に変化させてみせている。

この映像は、アニメ『サウスパーク』のクリエイター、トレイ・パーカーとマット・ストーンが設立したスタジオDeep Voodooによって生み出された。監督はラマー本人と、ラマーとのタッグも長いMVプロデューサーのデイブ・フリーだ。

映像に現れる人物は、黒人たちがこれまでに経験してきた出来事へのコメンタリー(注釈・解釈)として機能している。リリックに双極性障害とあればカニエ・ウェスト、殺人事件に関わる内容にさしかかれば射殺されたラッパーのニプシー・ハッスルの顔が、まるでラマーに憑依するかのように現れる。

ディープフェイクといえば、これまではハリウッド女優の顔がポルノ映像に被せられたり、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が国民に対してロシアに降参するよう呼びかける映像など、悪用された例ばかりが取り沙汰されてきた感がある。

しかし、これはあくまで映像合成手法のひとつであり、今回のMVのように正しく使えば、優れた芸術的表現を可能にする技術であることが再認識できる。

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