「Twitterに残ってもらうかも…」

マスク氏、批判を受けて異例の謝罪。Twitter社員に「こいつは最悪」発言

イーロン・マスク氏は、アイスランドで勤務しているTwitter従業員のHaraldur “Halli” Thorleifsson氏から「自分は解雇か」と尋ねられたが、その仕事ぶりや身体の障害に関するやりとりの後で嘲笑するアイコンを返したうえ、「こいつは最悪だ」とツイート(現在は削除)。改めて人事部門からクビを宣告した。

さらに翌日、マスク氏は「こいつは独立した資産家で、実際にはほとんど何も仕事をしていない。障害がありタイピングができないとうそぶいているが、実際はその間、嵐のようにツイートしている」とThorleifsson氏を非難するツイートを発した。

Thorleifsson氏は、Googleの「サンタを追いかけよう(Santa Tracker)」や、Appleマップの構築支援ツールの開発といったプロジェクトを手がけてきた自身のデザイン事務所Uenoを2021年にTwitterに売却。自らもシニアデザインディレクターとしてTwitterに加わっていた人物だ。Twitterへの売却までにも大手テクノロジー企業から何度も買収の誘いがあったものの、自身が筋ジストロフィーの進行で働くのが難しくなるまでは、真剣に売却することは考えていなかったと言う。

さらに、Twitterへの売却はThorleifsson氏にとって不利だったものの、その売却金額を給与として受け取ることを選択し、自身はTwitterでイノベーションチームを率いることにした。これは、一括だと投資扱いで22%のキャピタルゲイン税となるが、給与とすれば46%の所得税を自国に落すことができ、公共サービスにより貢献できるからだった。また同氏は個人的に、アイスランド各地に車椅子用スロープの設置を進めるなどしており、アイスランドの2022年度パーソン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。

なお、Thorleifsson氏がTwitterへ加わることを決めたのは「Twitterがそのポテンシャルを発揮していない」と本気で思っていたからだと語っており、その点ではマスク氏と同じ考えを持つ人物でもある。

Thorleifsson氏と過去に仕事をしたことがある、旅行ガイドブックLonely Planetの元CEOダニエル・ホートン氏は、マスク氏がThorleifsson氏を罵倒するツイートを繰り返していることを知り「これは見るに見かねた振る舞いだ」とツイートした。さらに、「彼の仕事に対する姿勢だけでなく、その才能と謙虚さはワールドクラスだ。まさに、自分が困難な状況に置かれたとき、チームにいて欲しい人材。 “実際は仕事をしていなかった” なんて誤解も甚だしいと思う」と述べた。また、Thorleifsson氏を知る他のTwitterユーザーからも、彼を擁護する発言がいくつも投稿された。

この発言を知ったマスク氏は、何かがおかしいと感じたのか「何が本当で、自分が何を言われたのか整理把握するため」に、Thorleifsson氏にビデオ通話を打診。「ツイートでやりとりするよりも直接話す方が良い」ともツイートした。そして直接の会話をした後、マスク氏は考えを改めてThorleifsson氏に謝罪し、「Twitterに残ってもらうことも検討中だ」とまで述べている。

New York Timesは、Thorleifsson氏を解雇することはTwitterにとって損失の方が大きい可能性があると述べている。Twitter上では、同氏の退職金がしっかりと支払われるのであれば1億ドル相当に上ると推測されており、本人もマスク氏に退職金を全額支払えるのか確認するように求めている。

これには、Twitterが従業員に対して退職金の全額支給を拒否し、訴訟になっていることも絡んでいるだろう。そして、マスク氏が「Twitterに残ってもらう」可能性を示したのも、この退職金を払いたくない側面があるのではという推測もある。だが、Thorleifsson氏は退職金を受け取ってTwitterを去ることを決めているようだ。すでに彼は、故郷に自分の母親の名を付けたレストランの開業準備に着手したと述べ、その宣伝を始めている。

またThorleifsson氏は、「明日、何かを発表する」とツイートし、「それはここ数日の出来事とは一切関係のないことだ。しかし、それは私が長い間取り組んできたことで、誇りに思っていることでもあるが、恥ずかしくもある」と述べており、そちらにも注目が集まっている。ちなみに、マスク氏が「嵐のようにツイートしている」と述べていたことについては「スマートフォンを使っており、これなら指1本でツイートできて楽だ」と説明していた。

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