昨年も別の場所で、同じ銀河が2つ見える現象が報告されていました
ウェッブ宇宙望遠鏡が「宇宙蜃気楼」撮影。重力レンズで同じ銀河が3か所に
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠(JWST)は稼働を開始して以来、これまで見ることのできなかった遠い宇宙や、これまでよりもはるかに鮮明な宇宙の姿をわれわれに見せてくれている。その最新の画像では、重力レンズ効果のトリックによって同じ銀河が3か所に、しかも異なる時代の姿で見えている様子を捉えた。
いま現在、われわれが見ている宇宙は、その光が地球に届くまでに非常に長い時を経ている。たとえば数千光年の彼方に見える銀河は、数千年前の姿をわれわれに見せているということだ。今年1月には、JWSTが約136億光年の彼方にある銀河の姿を捉えたかもしれないと発表されていたが、もしそれが本当なら、それはビッグバンからわずか2億年後、最も初期の宇宙に存在した銀河を垣間見せるものと言えるだろう。
そして、欧州宇宙機関ESAが今月公開したウェッブ望遠鏡の新しい画像では、その1枚の中で同じ銀河団が3か所に写っているのが発見された。しかも、それぞれが異なる時期の姿で写っているのだ。
その銀河団はAT 2022rivと名付けられた超新星を含むものだが、RX J2129と呼ばれる銀河団の背後に存在すると考えられる。本来ならRX J2129で遮られて見えないはずだが、銀河団が持つ巨大な重力が光を曲げる「重力レンズ」効果によって、地球にその光が届いている。そして、重力レンズ効果はいくつかの方向に光を曲げるため、AT 2022rivの姿も3つの経路で地球に届き、迂回してきた距離の差によって、実体はひとつしかないにもかかわらず、異なる3つの時代の姿が見えているというわけだ。
具体的に言えば、3つのAT 2022rivのうち最も古い姿には超新星が含まれているが、2つめである約300日後のAT 2022rivでは、すでに超新星は消えてしまっている。そして3つめは、最初の姿から約1000日後の様子が見えている。
この蜃気楼のような現象を他の観測でも見つけることができれば、宇宙に起きている変化をさらに詳しく調べることが可能になる。研究者らは、より多くのデータと学びが得られるようになるはずだ。