なかなか投入しない「アップルの独自検索エンジン」と関係が?

Google、アップルにiOS版Chrome検索収益の一部を支払っている?

Image:Primakov/Shutterstock.com

GoogleがiOS向けChromeブラウザから得られる検索収益の一部を、アップルに支払っているとの噂が報じられている。海外ニュースメディアThe Registerが、この問題に詳しい関係者の話として伝えていることだ。

iPhone純正ブラウザSafariの標準検索エンジンは、Googleに設定されている。このためにGoogleがアップルに「デフォルト検索エンジン代金」を支払っているとの噂は、数年前からBloombergほか複数の情報源が発信していた。

今回の報道は、それとは別にアップルとGoogleの間に秘密の金銭関係があるということだ。The Registerは、これら密約が「アップルがGoogleの対抗馬となりうる検索エンジンを発表せず、Safariブラウザ開発にも投資していない」理由だと推測している。

The Regsiterが根拠の1つとしているのは、英国の規制当局である競争・市場庁(CMA)が発表した報告書にある一節だ。そこには「Googleは、iOS上のブラウザトラフィックから得た検索収益の一部をアップルに支払っている。Safariのデフォルト検索プロバイダになる見返りに、GoogleはSafariの検索トラフィック収益の一部をアップルに支払っている。様々な商業的取り決めに基づき、Googleは(X)検索収益の一部をアップルに支払っている」と記載されている。

原文の「X」部分はハサミのアイコンが付されており、要は伏せ字である。Safariは名指している一方で、アップルが見返りを受け取る2つ目の製品は伏せられている。それはChrome以外の何者でもない、と推測しているわけだ。

さらにCMAは「これらの契約からアップルは、SafariおよびiOSデバイス上の(X)でのGoogle検索のトラフィックから収益のかなりの割合を受け取っている」と主張。こうした利益分配の取り決めが「iOS上のブラウザ間の競争のインセンティブを弱めている」と結論づけている。

こうした両社の利益分配は、2021年末に米カリフォルニア州で提起された反トラスト法違反裁判の訴状でも言及されている。原告側の主張は「Googleがアップルに数十億ドルを支払い、アップルと利益を共有することに合意したのは、アップルを競争相手とする脅威と恐怖を排除するためだ」というものだ。

もっとも、CMAはThe Registerに対して「いかなる機密情報についてもコメントや開示はできない」として伏せ字の特定は拒否。Googleとアップルに「確認または否定」を求めたものの、両社ともノーコメントだったとのことだ。

アップルが独自の検索エンジンを開発中との噂は、これまで何度も報じられてきた。何もせずともGoogleから莫大な分け前が入ってくる立場と反するようだが、Googleに対する「いつでも競争する用意はある」という圧力をかけつつ、規制当局の包囲網が狭まっていることへの準備を兼ねているのかもしれない。

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