戦闘機のテストパイロットもAIに

AIが初めて戦闘機を操縦。米軍機で17時間超の飛行

Image:Lockheed Martin

ロッキード・マーティンが、人工知能エージェントの操縦による、17時間以上の戦闘機の訓練飛行を完了したと発表した。

この飛行に使用されたのはVISTA X-62Aと呼ばれる、F-16ファイティングファルコンをベースに開発された練習機で、かつてはNF-16D VISTAと呼ばれていたもの。

VISTA X-62Aは米空軍テストパイロットスクール(USAF TPS)のために製造された機体で、他の航空機の性能や特性を再現できるソフトウェアを搭載しているのが特徴。なおVISTAとは「Variable In-flight Simulation Test Aircraft」の略称だ。

USAF TPSの研究部長を務めるM. クリストファー・コッティング博士は「VISTAは、最先端の人工知能技術の開発とテストを、新しい無人航空機の設計と並行して行うことを可能にする」と述べ「このアプローチは、新型航空機開発・生産時の集中テストと組み合わせて、無人プラットフォームの自律性を急速に成熟させ、戦闘員に戦術的に適切な能力を提供することを可能にする」と述べている。

17時間のAIパイロットによる飛行は2022年12月に行われ、ロッキード・マーティンいわく「戦術機でこのような形でAIが使用されたのは初めて」とのこと。米空軍は最近、VISTA X-62Aにロッキードのモデル追従アルゴリズム(MFA)とシミュレーション自律制御システム(SACS)を搭載してアップグレードした、最新のVISTA シミュレーションシステム(VSS)を開発した。このプラットフォームを使用することで、自律的に飛行できる新しい航空機設計のテストの迅速化が期待できる。

SACSシステムは、ロッキード・マーティンのスカンクワークス部門が開発したエンタープライズ・オープンシステム・アーキテクチャー(E-OSA)で構築されており、VISTA X-62Aが搭載するエンタープライズ・ミッション・コンピューターV2(EMC2) 、通称「アインシュタインボックス」で動作する。

EMC2は「地上のコクピットシミュレーターを実際の航空機システムとリアルタイムでリンク」するなど、新しい機能を運用システムに展開する前に、迅速かつ安全に実験するといった、4つの重要な機能を提供するものだ。

追加のSACSコンポーネントには、高度なセンサーの統合、マルチレベルのセキュリティ対策、および復座型コクピットにそれぞれ設置される「Getac」タブレットディスプレイが含まれる。

これらのコンポーネントは、ラピッドプロトタイピング式開発の利点を維持しながらVISTAの機能を強化するという。より具体的には、迅速なソフトウェアアップデートで試験飛行の頻度を増やし、緊急事態発生時の国家安全保障のニーズを満たすための、AIと自律飛行機能の開発ペースを早めるとのことだ。

現在、VISTA X-62Aは一連の定期点検を受けている最中だが、2023年中にはカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で飛行を再開する予定になっている。

関連キーワード: