少なくとも85個の破片を確認

謎の「ロシア人工衛星」が軌道上で分解、無数のデブリと化す

Image:Christoph Burgstedt/Shutterstock.com

米宇宙軍によると、1月にロシアの人工衛星「Kosmos 2499」が軌道上でバラバラに分解し、追跡可能な大きさのものだけでも85個を超えるデブリと化したことが判明した。この衛星が分解したことを確認したのは、米国の宇宙軍第18宇宙防衛隊(18SDS)で、現在これらのデブリは地球上空1169kmの軌道上にあるという。

国際宇宙ステーション(ISS)の軌道は高度400km前後であり、映画『ゼロ・グラビティ』のように今回のロシアの衛星の破片がISSに襲いかかることはないものの、破片がバラ撒かれた高度から考えると、それらが地球大気圏に落下して燃え尽きるには、非常に長い年月(おそらく100年以上)がかかると考えられる。なお18SDSは、この衛星の分解原因についてはなにも示していない。

一方、RussianSpaceWebの記者によれば、Kosmos 2499は2014年5月に3機のRodnik軍事通信衛星とともに打ち上げられたもので、当時は公の打ち上げマニフェストには記載がない謎の物体だった。

この存在しないはずの物体を発見した米国は、打上げの記録がないことから分類上はデブリ扱いとしていた。しかしその後、このデブリは自ら移動し、ロシアが打ち上げたRokotロケットの上段に接近したことが確認。米国はこの物体と、2013年12月から軌道上で同様の動きを見せていたKosmos 2491を、デブリではなく、打ち上げられたペイロードに再分類した(Kosmosの名称はこのときに付けられた)。

当時Kosmos 2499と2491は、実験的な対衛星兵器、衛星保守用の宇宙機、またはスペースデブリ収集機ではないかとの憶測を呼んだ。英国のシンクタンク王立国際問題研究所は「それが何であれ実験目的の衛星だろう」との考えを示した。当時のロシア宇宙機関Roscosmosのトップ、オレグ・オスタペンコ氏は2014年暮れの記者会見でこのうわさに触れていたという。

Kosmos 2499はその後も時おり、動きを見せる程度の活動をしており、近年では2017年に何度かのマヌーバーを実行していたとされる。ただし現在、Kosmos 2499は無数のデブリになってしまっており、すでに大量のデブリが散乱している地球の軌道上をさらに混雑させるものになってしまった。

また、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者兼天体物理学者ジョナサン・マクダウェル氏は、18SDSの報告に対してTwitterで「Kosmos 2499の分解現象は2021年10月に続いて2度目の発生だ」と指摘している。そして、なぜ複数回も分解が起きるのかとの問いには「おそらく推進系のユニットかなにか」だと推測している。

ちなみに、欧州宇宙機関(ESA)は地球の周りには少なくとも10cmを超える大きさのデブリだけでも3万6000個が地球を周回していると説明している。そして、先日ISSで起こったソユーズの冷却水漏れのように、デブリはその大きさがネジ1個分ほどであったとしても、場合によっては重大な問題を引き越す可能性がある。各国は可能な限り、軌道上にデブリを拡散させないよう心がけなければならない。

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