仮想と現実における犯罪の定義の違いに対処

メタバース内での犯罪、どう監視すべき? 国際刑事警察機構が検討中

Image:HUANG Zheng/Shutterstock.com

国際刑事警察機構(ICPO/インターポール)は現在、メタバース内での犯罪を取り締まる方法について調査検討中であると、事務総長のJürgen Stock氏が述べている。

ここ最近話題にはよく出てくるものの、それが一体どんなものかいまひとつピンとこない技術の代表格であるメタバース。インターポールもこの現実世界を模した仮想空間を通じた犯罪の可能性については手探り状態であるため、独自のバーチャルスペースを構築し、そこでトレーニングを受けたり、仮想ミーティングを行って理解を深めているという。

Stock氏いわく「犯罪者は技術的に洗練されており、犯罪に利用可能な新しい技術やツールが出てくればすぐに、それに適応するプロフェッショナルだ」「われわれも、そうした新技術に十分に対応する必要があるが、立法機関や警察、そしてわれわれの社会全体が、犯罪者たちからやや遅れていることがある」とした。

法執行機関の対応が遅すぎると、そのツール(ここではメタバース技術)への人々の信頼にも影響がおよんでしまう。インターポール独自の仮想環境は、安全なサーバーを介してアクセスするようになっており、捜査官たちがメタバースのイロハを学び、そしてそこで起こりうる犯罪や取り締まり方法についてアイデアを得ることができる。

実際のところ、メタバースの定義はあいまいで、必ずしもVRヘッドセットを装着して仮想の3D空間の中でアバターを相手に日常生活を送る必要があるかと言えばそうでもない。VR空間はメタバースという定義ではない。

しかし仮想世界では、すでに犯罪活動が行われている。BBCは2022年に行った調査で、VRゲーム内でのセクハラや暴言の問題を指摘。またその年の暮れ、Facebookの親会社でVRヘッドセットのMetaが構築している「Horizon Worlds」のなかで、21歳の研究者が性的暴行を受けたと報告した

インターポールのテクノロジー&イノベーション担当エグゼクティブプロデューサーのMadan Oberoi氏は「犯罪と呼べるのかどうか、わかりにくい犯罪が存在する」とコメント。「現実空間を基本とするこれらの犯罪の定義を仮想空間に当てはめようとすると、うまくいかないことが多い」と述べ、このような問題に対する人々の意識を高めることが、インターポールが現在直面する大きな課題だという。そして法執行機関がメタバースで傷つけられている人たちを救うには、まずメタバースについて知っている必要があるとした。

メタバースを研究するKabuni代表のNina Jane Patel氏は「物理的な世界で違法・有害なものは、仮想合成の世界でも違法であるべき」だと主張している。そして、(現実の)物理世界と仮想世界で犯罪の定義が異なってしまうと、法執行機関は非常に難しい立場に立たされるとした。

またStock氏は、メタバースにおける捜査では、たとえば「マウスを1回クリックしただけだとしても、その証拠が他国のサーバーの中にしかないケースがある」と懸念する。そのため、195か国が加盟するインターポールの活動がより重要になると予想しているようだ。

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