踊る動画に、実は踊らされてるかも

TikTokをアプリストアから追放、アップルとGoogleに対して米上院議員が要請

Image:Luiza Kamalova/Shutterstock.com

米国のマイケル・ベネット上院議員が、アップルとGoogleに対して、アプリストアからショートムービー共有アプリのTikTokを削除するよう要請した。なお2社とも、ベネット氏からの要請についてコメントしていない。

この要請は、TikTokに対して潜在的な国家安全保障上のリスクの懸念が高まっているということと、米国民が利用できるアプリの決定権が実質的にアップルとGoogleにあることを示している。

米上院情報特別委員会の委員を務めるベネット氏は、TikTokの親会社である中国ByteDanceは、中国の法律により、諜報活動を支援するために内部データを政府に渡すことを要求される可能性がある点が、他のSNSアプリと異なるとし、「具体的には、(中国政府が)ByteDanceに米国民の機密情報を引き渡させたり、米国民が受け取るコンテンツを中国の利益促進のために操作したりすることが考えられる」とした。そして「これらのリスクにより、現在のTikTokは国家安全保障に対する受容しがたい脅威になっている」と主張している。

TikTokに関する懸念は数年前から言われていることで、サービスを提供する側のTikTokも繰り返しユーザー情報の中国への引き渡しをすることはないと主張し、米議会とも話し合いの場を持ってきた。しかし、議員らの懸念が晴れることはなく、議会は2022年に政府のデバイスへのTikTokのインストールを禁止する法案を可決している。議員の中には米国内におけるTikTok利用を完全に禁止することを提案する者もいる。

またベネット氏は、今回の要請を記した書簡で、中国にいるByteDance従業員が米国のTikTokユーザーの情報に繰り返しアクセスしていたと主張する昨年のBuzzFeed Newsの記事を紹介している。この記事はByteDance社内の会議を録音したものだとされている。他にも同氏は、TikTokがたびたび特定の動画を強力に人々の目に触れるよう「ブースト」し、バイラルと呼ばれる流行の状態にするのを手助けしていたとするForbesの記事も紹介した。

TikTokの広報担当者は当然ながらベネット氏の主張を否定し、議員の主張は「われわれが収集する情報や、我々の情報セキュリティ管理に関する誤解を招く内容の報告によるもの」と声明で述べた。そして「国家安全保障の専門家と交渉した計画であるプロジェクト・テキサスを通じて、我々のコミュニティに対してデータの安全性とTikTokプラットフォームの完全性についてさらなる保証を提供するために行った、かなりの投資も無視されている」と反論している。

なお、アップルとGoogleに対しては昨年、連邦通信委員会(FCC)のコミッショナー、ブレンダン・カー氏もTikTokを除外するよう求めていた。FCCはファーウェイやZTEといった中国企業のネットワーク機器が米国の通信に関する情報を収集するために使用される可能性があるという懸念に対応し、2022年11月には米国内における両社の通信機器の承認を禁止している。

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