噛み合わない会話

AIで『となりのサインフェルド』風コメディを自動生成し続ける配信「Nothing, Forever」

Image:Nothing, Forever

AIプラットフォームの共同制作者であるSkyler Hartle氏とBrian Habersberger氏が、ライブ配信サービスTwitchで、往年のシットコム番組『となりのサインフェルド』をパロディとして再現する「Nothing, Forever」を配信している。

映像はまるで80~90年代初頭の海外ゲームのようなCGアニメーションで、登場人物は『となりのサインフェルド』のジェリー、ジョージ、エレイン、クレイマー風の4人。その動きや会話などはほぼすべてAIアルゴリズムによる自動生成で、機械学習やジェネレーティブアルゴリズム、クラウドサービスを組み合わせて番組を構築しているという。

番組のほとんどのシーンはアパートのリビングルームで展開され、キャラクターたちの会話は他愛もないものだ。だが、しばしば会話が噛み合わなくなるところはいかにもAIが生成している感じが出ていて、むしろに面白く思えたりもする。

Hartle氏は、なぜこの番組を配信しようと思ったのかについて「もともと、奇妙で調子の外れた、ナンセンスなアートプロジェクトとして始めた」と語っている。「ただ、もう少し磨きを掛けるために1年以上の時間をかけて作業してきた」そうだが、もちろんその間、AIはとてつもない勢いで発展している。

会話はOpenAIの言語モデルGPT-3で自動生成しており、モデレーションフィルターを介している以外は、ストリーミング中の会話をいじっていないとのことだ。またいくつかのシーンごとに、ジェリーを模したキャラクターのラリーによる漫談コーナーも設けられている。ドリフのような観客の笑い声も所々差し込まれるが、だいたいはなぜここで笑うのかわからないタイミングだ。

ただ、このような「ジェネレーティブメディア」とでも言うべきジャンルが進化してゆけば、将来的には本当に面白いコメディ番組が生成されるようになるかもしれない。Hartle氏は、AI生成の会話はTwitchのコメント欄への書き込みによって変化すると説明し「われわれが考えている大きな要素のひとつは、いかにして人々に物語作りに参加してもらい、自分たちの物語にしてもらうか、ということだ」と話している。

AIが自動生成する『となりのサインフェルド』は、キャラクターの会話を見ながらもほとんど話が見えてこないシュールさだが、限りある人生の一部を無駄に過ごしたい人には、最適な暇つぶしかもしれない。記事執筆時点では、そんな人が約8200人もTwitchに集合している。

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