マスク氏は意に介さず

米司法省、AutopilotおよびFSDに関しテスラの主張を調査中

Image:Jose Gil/Shutterstock

テスラは、1月31日に開示した年次報告資料のなかで、米司法省から運転支援機能であるAutopilotおよびFull Self-Driving(FSD)オプションに関する文書の提出を求められたことを明らかにした。

Autopilotは、テスラ車が搭載する先進運転支援システム(ADAS)のことで、車線維持や速度維持といった機能を含んでいる。FSDも基本はADASだが、ハイウェイだけでなく一般道での運転支援が追加され、信号待ちや右左折にも対応できるのが大きな特徴。ただし、いずれもあくまで自動運転レベル2の機能で、ADASの範疇から外れるものではない。

テスラは資料において「われわれの知る限りでは、現在進行中の調査においてわれわれに不正行為があったと結論付けた政府機関はない」と述べている。ただ、テスラCEOのイーロン・マスク氏によるこれらの機能の誇大な宣伝は当時から規制当局の注目を集めていた。そして司法省までが調査に乗り出したということは、テスラに向けられた当局の監視が強まっていることを意味していそうだ。

昨秋Reutersは、テスラが少なくとも1年程前から司法省の調査を受けていると報じていた。これはテスラのAutopilotが関わる衝突事故が、死亡事故を含め十数件発生したことから開始されたものだという。

また米証券取引委員会(SEC)は、テスラ車の「自動運転」機能についてのマスク氏の具体的な宣伝行為や発言内容について調査を行っている。これは2016年にテスラが公開した、テスラ車が公道を自動運転で走行する映像が、実際には多分に演出を含むものであり、マスク氏がそのような動画を作るよう指示したと、当時のエンジニアが証言しているのを受けてのことだ。

他にもテスラは、「自動運転」使用中に発生した事故について国家道路交通安全局(NHTSA)から特別調査を受けたり、カリフォルニア州の自動車局(DMV)からはADASについての宣伝が不当なものだと訴えられたり、さらには一部のドライバーからも欺瞞的なマーケティングについて訴訟を起こされたりしている。テスラのサポートサイトでは、AutopilotとFSDが完全な自動運転を表すものではないため「完全に注意深いドライバー」が運転席でハンドルを握っている必要があることを明確にしている。一方、FSDの宣伝ページでは「車に行き先を伝える」だけでよいと主張している。

これだけ包囲網が敷かれているような状況でもマスク氏は意に介していないようで、2022年第4四半期決算の説明の場では「FSDは明らかに急速に良くなっている」と述べている。

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