日本行動嗜癖・依存症学会が声明発表

「ゲームやネットが発達障害“的”児童を増やす」文科省調査に学会が抗議声明。「科学的エビデンスに基づかない」

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Image:Maksym93/Shutterstock.com

文部科学省は、ゲーム・ネット・スマホが発達障害的な児童を増やすとする調査報告書を昨年末2022年12月13日に発表。これに対し、日本行動嗜癖・依存症学会が「科学的エビデンスに基づかない記述」であるとして、2023年1月20日付けで抗議声明を発表した。

文科省の報告書は「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」というもので、ゲームをプレイすること、インターネット、スマホを使用すること、新聞を読まないことによって発達障害「的」な児童が増えると主張している。

これに対し日本行動嗜癖・依存症学会は「科学的エビデンスに基づかない記述」だと抗議。「エビデンスに基づいた政策立案と運用が求められる行政府が、このような非科学的な主張をすることは断じてあってはいけません」とし、「本学会は当該文書に含まれる該当箇所の削除または訂正を求めます」と表明している。

同学会によれば、文科省が行った調査は、各クラスに学習・行動・情緒の問題を抱える児童がどのくらい存在するか、という質問に担任等の教員が答えるというものだったのこと。実際に、文科省自身も「学級担任等による回答に基づくもので、発達障害の専門家チームによる判断や医師による診断によるものではありません。従って、本調査の結果は、発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではなく、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合を示すもの」だと説明している。

調査報告書では、発達障害「的」児童が増える要因として、「理由を特定することは困難であるが」と前置きしつつも、「子供たちの生活習慣や取り巻く環境の変化により、普段から1日1時間以上テレビゲームをする児童生徒数の割合が増加傾向にあることや新聞を読んでいる児童生徒数の割合が減少傾向にあることなど言葉や文字に触れる機会が減少していること、インターネットやスマートフォンが身近になったことなど対面での会話が減少傾向にあることや体験活動の減少などの影響も可能性として考えられる」と記述。

一方で、同学会では「科学的研究において確認されている問題点は、スクリーンタイムが長い児童は、運動不足になる傾向にあり、BMIが高くなるというものが主たるものです」とし、「ゲーム、インターネット、スマホの利用によって情緒、知能、行動面へ悪影響があるという科学的な報告はありませんし、特別な支援が必要が生じるといった報告も存在していません」と反論している。

「少なくとも、ゲーム、インターネット、スマホの害悪論は科学的エビデンスに基づかない見解」だとし、「文部科学省も含め、一般的にゲーム、ネット、スマホは悪いもの、新聞を読むことは良いことといった思い込みがあり、その思い込みが今回の問題点の根幹にあるのではないかとも考えられます。科学を重んじるべき文部科学省が、世にはびこる俗説に飛びつき主張するなどということは断じてあってはならないことだと私たちは考えています」と述べている。

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